ブロスジャパン | 心の底から良いと思えるものしか作らない。確固たる信念で世界一を見据える会社。
鯖江にめがねの会社は数あれど、これほど強い信念を持ってものづくりに取り組まれている会社はあまり無いかもしれません。
Forbes SMALL GIANTS AWARD 2019でブランド賞を受賞されたブロスジャパン株式会社は、今年で創業16年目を迎える社員10名の中小企業。でも、その中身はとんでもなく大きな未来を見据えておられました。

1年前に水落町に出来た新社屋は外観も素敵ですが、中もこだわり抜かれたオフィス空間とリビングスペースが。工場見学に来られる方々のための宿泊スペースもありました。
世界最高のものづくりとは何か、世界で1番かっこよくて、良いものとは何なのか。ブロスジャパンの思いと挑戦をお届けします。
自分の大切なことを信じながら事業拡大を進める。ずっと守ってきた2つの経営理念。

お話を伺ったのは代表の浜田謙(はまだ・けん)さん。少し前までは取材は断っておられたそうですが、業務拡大に向けて引き受けてくださいました。
浜田「うちの経営理念は2つあって、1つは『僕が信じるもの、自慢できるもの、心の底から良いですよって言えるものしか作らない』ということです。」
日本ハムにお勤めされていたサラリーマン時代、コストや生産数量などの障害があって商品づくりに妥協する部分もあったそうですが、それらを除外して本当に自分が身に付けたいものしか作らないでおこうと決め、ブロスジャパンを設立された浜田さん。

現在はスタッフ10名と外部スタッフ8名の組織。ブロスジャパンの思想に合う人なら何人とは決めていないし、良い人がいればいくらでも採用したいと話します。
浜田「もう1つ、「思いを共有できるパートナーと供に」という経営理念があります。うちの会社は、お客様も社員も一つのチームのように同じ方向を向いて思いを共有したいと考えています。なので、たとえお客様であってもうちの従業員に無礼なことをしたりとか、つまりチームワークを乱すようなことをされるお客様は今後のお取引をご遠慮いただく、くらいの思いでやっています。弊社についても、BJCLASSICというブランドについてもお客様が我々に力をかして育ててくださった部分が大いにあります。そんなお客様に恩返しをするためにも、パートナーと思える方としか繋がっていけません。」
2つの経営理念を守り続けてこられた浜田さん。この2つの理念を守れる会社は、そうありません。浜田さんの、ものづくりへの強い思いが感じられました。

浜田「逆に、経営理念を押さえておけば何をしても良いです。2018年にはEVE un BLUEという、めがねと香水のブランドを立ち上げました。そして、2019年からは世界的なデザイナーと組んで、本格的な洋服ブランドを立ち上げます。」
アメリカのラボのようなオフィス空間で、世界一かっこいい仕事を。

浜田「なぜ洋服をやりたいかというと、鯖江のめがねは500億円程の市場と言われているんですが、大きな意味でのファッションはその何十倍もあるからです。さらに洋服屋でめがねを買うとき、店員はめがねのことを「小物」と呼びます。小物の中にはアクセサリー・鞄・時計なども含まれていて、端の方のスペースに置いてある。それが今のめがねの立ち位置なので、悔しいんです。逆のパターンはよくあって、CHANELやGUCCIはめがねを出すけど、めがねメーカーが洋服をやったことは無い。それを世界に先駆けて、うちがやりたいと思っています。」
EVE un BLUEを立ち上げたときにそれを思い付いたのだと浜田さん。CHANELやCOMME des GARCONSなど、一流と呼ばれるブランドには香りがあることに気付き、3種類の香りと、そこからイメージされるめがねを作りました。

浜田「本来のものづくりは作り手の思いが全てです。でも、市場から要望されているけれど世の中にはまだ無いものを作っていくことにしたので、EVE un BLUEでは敢えてめがねにこだわらないでいこうと決めました。今までの固定概念を覆して、もっと直感的に「好きかも」と思えるものを作りたい。だから、世の中にないものを作っていきましょうというのがこのブランドのコンセプトです。」
ブロスジャパンのブランド『BJ Classic』は、自らが発信して売っていくことがある程度形になったので、次の展開に進もうと思っておられるそう。業界で誰もやっていなくて、世界が驚くようなブルーオーシャンを切り開きたいと、力強く真っ直ぐな視線で語る浜田さんの言葉には、一言一句に重みがあります。

浜田「今までは、掘っ立て小屋のような場所で仕事をしていたけど、オフィスを新しく作ったのは世界最高のものづくりを謳うためです。来る人に気持ちよく過ごしてもらうにはどうしたら良いだろうと考えたところ、ヨーロッパのセレクトブランドのような、ワインを飲みながら商談をしたりできるアトリエを日本でもやりたいと思ったんです。」
めがねメーカーでそれをやっている会社は無いらしく、まず自分から始めていこうと考え、1階はアメリカのラボラトリーのようなガラス張り、2階はヨーロッパのリゾートホテルのような空間を実現されました。

県外や海外が主な取引先のため、以前は福井での認知度は低かったそうです。しかし新しいオフィスに移動してからは、やっていることは以前と変わらずコツコツとした仕事で売り上げもそんなに変わらないけれど、福井の方からも認知いただけるようになったそうです。また、スタッフの自信にもつながっているらしく、世界に目を向けている会社だということが内部に浸透してきているのだとか。
経営者を目指しての転職。前職との違いに戸惑いながら自身の成長を感じる日々。

次に、役員でチーフデザイナーの佐佐木健介(ささき・けんすけ)さんにお話を伺いました。鯖江市出身の佐佐木さん。高校を卒業後、鯖江のめがねメーカーに17年勤務された後、ブロスジャパンに一昨年入社されました。
佐佐木「今は社長の右腕として、企画・デザイン・生産管理・営業など全てを担当しています。前職でも同じ内容の業務はしていましたが、今の方がハイレベルな仕事内容です。さらにチーフデザイナーという立場で、マーケティングチームとデザインチームの統括をしています。」
もともと海仲間だという浜田さんと佐佐木さん。10年前から浜田さんにアプローチしておられましたが、アーティスティックな会社にしたいという思いから断られていました。しかし業務拡大にあたり、2017年の春についに入社されました。

佐佐木「浜田とは三国でジェットスキーに乗っていて、昔からの知り合いです。船舶免許を取ることが入社の条件でした(笑)」
浜田「遊びのときもありますが、夏は毎週お客さんを海に案内しているので、半分は仕事です。鯖江に来られたらまず工場見学をして、夜は勉強会兼飲み会をし、次の日は朝から海にいく。このパターンが僕のやるべき仕事です。海を見ながらデザインのことを考えて、船の上で商品のことを考えています。」
9月になると2人とも真っ黒になっていると話す佐佐木さん。前職と比べると、かなり環境が変わったように思いますが、いかがでしょうか。

佐佐木「前職はOEMが多くて、自分たちの意思に関係なくお客さんが欲しいものを作るということを中心にやっていました。今やっていることも傍から見れば他社と一緒ですが、そこに自分たちの思いが有るか無いかが全く違う部分です。OEMだと作った後売れようが売れまいが関係ないんですが、今は責任を持って売っていく。実際、セレクトブランドの中では、日本で3本の指に入るような売り方をしています。」
浜田「彼は他社の生産管理部門から見ると想像を絶する仕事をしています。何本発注しても良いけれど、売れなかったら全部自分の責任。しくじれば何千万円の損失で倒産という世界なので、たまに寝ているときにうなされています(笑)。でもその分、会社に利益をもたらせばその分報酬を出します。」
難しさは感じるけれど、その分自分を高めながらやっているという佐佐木さん。今はブロスジャパンの役員として、ブランドについてお客様にしっかりと理解してもらわないといけない立場だと自らを奮い立たせます。

佐佐木「入社したときから、経営に携わりたいと考えていました。今はBJ Classicで飯を食っていますが、今後EVE un BLUEで利益を出していきたいと思っています。」
浜田「そういう気持ちで来た人には、そういう対応をします。自分のやりたいことをやってもらえば良いんです。」
自由度が高くて魅力的ですが、自分に何ができるか分からないから不安だという声もあるかもしれません。
浜田「洋服関係も、生産管理も、営業も企画も全部人が欲しい状態です。取り敢えずうちがどういう会社で、僕がどんな思いでものを作っているのか見に来てください。」
佐佐木「営業でサブに付けるような人が欲しいです。あと一緒に海に行けるような、気さくな方に来てほしいですね(笑)。僕みたいに、きっと海好きになりますよ。」
浜田「大きな会社だと社長になかなか会えないし、事業を立ち上げるのも相当なエネルギーが必要です。でもここだと僕に毎日会えるし、新しい事業も簡単に興せるので、可能性はいくらでもある環境です。」
鯖江ならではの環境で、ワークライフバランスを実現するブランドの育て方。

鯖江に暮らす2人に、このまちの良いところを伺ってみたところ、働き方の話へ。働き方から、鯖江の暮らしが透けて見えました。
佐佐木「仕事で言うと、『鯖江時間』というのがあり、納期遅れは当たり前で、のんびりしています。なので20日先の納期でスケジュールを立てていますね(笑)。」
浜田「納期を守らないことは悪のように感じるかもしれないけど、残業するよりも家族と過ごす時間の方が優先順位が高いということなんです。前職では残業当たり前で夜中まで働いていましたが、家族を優先させることの方が大切だという考え方もある。」

それが鯖江に来て学んだところだと話す浜田さん。プロである以上、約束は守らなければならないが、全てを犠牲にして仕事をしなければならないというのは少し違う。それをコントロールしていくのが自分の仕事なのだとか。
浜田「僕らもそうあるべきだし、『ちょっと遅れるけど待って』と言えるものづくりをしないといけない。それを分かってもらうためにも、現場をお客さんに見てもらうことは大切なんです。家族との大切な用事をキャンセルしてまでその商品が早急に欲しいわけではないと思うので、信頼関係を培えるようなブランドにしていきたいですね。」

自らも痛みを伴いながら緊張感のあるものづくりをしているブロスジャパン。販売を外部に任せず、全て責任を持って取り組んでおられます。
世界一のブランドをつくる。鯖江を代表するブランドは、ここから生まれるかもしれません。気になる方は早めにご連絡を。浜田さんの話を聞いたら、きっと働きたくなりますよ。
【連絡先】
ブロスジャパン株式会社(webページはこちら)
0778-52-7075
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