【Hacoa-vol:3/5】木製雑貨、チョコレート、場作り…、特徴あるブランドの作り方。
若手に任せ、勝負する
ーーHacoaには他にもたくさんのブランドがありますが、どのような特徴があるのかを教えてください。
「Hacoa」ブランドの他には、
・木製デザイン雑貨ブランド「+LUMBER」
・ファッションレーベル「Anewood」
・チョコレートブランド「DRYADES」
・カフェ&スイーツ「KNOCKING ON WOOD」
があります。
ーー木製雑貨だけでなく、幅広いラインナップですね。
Hacoaは、2013年から全国に販売店舗を拡張していきました。2009年の本社社屋を建てた際にお店を構えましたが、そのときは商品も少なく、ギャラリーって感じで、お店では無かったですね。本気でお店づくりをしたのは、2010年の東京・秋葉原御徒町間に山手線高架下に出来た、2K540店です。その翌年にお台場のダイバーシティ、2013年に東京駅前のKITTE丸の内店、2015年に横浜赤レンガ倉庫店とルクア大阪店をオープンしていきました。
丸の内のような日本の一等地に店を持つことは、ものすごく影響力があります。以前はノベルティ等の注文の際、「Hacoaのロゴを取ってほしい」と言われることが多かったのですが、丸の内に出店してからはロゴを取ると、クライアントから付いていないと意味が無いと叱られる事も多くなりました。
店舗数が増える毎に利益もたくさん出て、投資に回してお店を増やしていきました。その際、どうしてもHacoaの商品だけでは足りなくなりました。Hacoaの商品は職人が福井で一つ一つ手作りで作っているからです。
ーーそうして新しいブランドが必要となり、誕生したんですね。
2014年に「+LUMBER」を立ち上げました。+LUMBERは、Hacoaのシスターブランドとして、木の良さを知って貰う為の入門編、カジュアルなティストで始めました。日本でなくても作れるように設計して、中国や台湾に信頼できる工場を見つけ、指導に行って、自分も工場に出資をしました。
最初は8アイテムを作り、年間3,000万円売れたら良いかなと思い始めたのですが、想定を遥かに超え、1億4,000万円売れました。ブランドを立ち上げる際には、スタッフから、自分はHacoaの商品を売りたくて入社したのに、なぜにハコアの職人が作った商品ではなく、海外で作った商品を売らなければならないのかと。このスタッフのハコア愛には感動しました。
しかし、私は、「このブランドは、地球に木を増やすブランドになる。ただ単に使いやすい、便利、かっこいいのスタイルで販売する訳では無く、この+LUMBERの商品を購入したら、地球に木が植えられる仕組みを埋め込み、販売する事にしている。1つの商品を売る事でお客さんと共に地球に木が植えられるんだよ。それも子どもたちの植林を支援する事で子どもたちの笑顔も増える。凄いと思わないか。」と、+LUMBERにはもうひとつの+LOVERプロジェクトと題したコンセプトで、木を増やす意図がある事も伝えました。これまでは、商品を作る為に木を消費して来ただけだったが、木の商品を販売する事で木を増やしたいと何年も前から考えていました。それをこの+LUMBERブランドの立ち上げと共に行いたい。
そう伝えるとスタッフは嬉しそうな笑顔になり、発売後には率先して販売を頑張ってくれました。そんなスタッフの頑張りもあり、予想を遥かに超えた売上になったのだろうと思います。
ーーそのころから、市橋さんはHacoaのデザインを若手に任されたそうですね。
新しいブランドが生まれ、2014年にHacoaの商品デザインは若者に渡しました。俺は+LUMBERをデザインするから若手スタッフに勝負しようと。後の結果は4対6といった感じで、+LUMBER がHacoaを逆転しました。
販売後、+LUMBERのネーミングがイギリスでかなり評価されました。「+板」という意味で、商品コンセプトが分かり易く、クールだとデザイン誌に紹介され、イギリスからの引き合いが多くなりました。最初は自分が行ってきた+LUMBERの商品開発、デザインも2018年頃から若手に任せています。
ーーファッションレーベルの「Anewood」についてはいかがでしょうか。
Anewoodは2016年にスタートしました。自分はファッションに疎いし全然興味も無かったから、この企画を社内の女性から提案されたときには、「自分には無理だ」と答えました。しかし熱意あるスタッフの提案に可能性を感じて、「キミがやれよ」と全面的に任せてスタートしました。
商品は、主にコルクを材料として使っているんですが、コルクは地中海沿岸の常緑樹であるコルク樫の樹皮です。美しさを見せていくことと、持続可能な素材であるということを大切にしています。
5感全て=体験を提供したい。
ーーチョコレートブランド「DRYADES」について、立ち上げの経緯を教えて下さい。(※詳しくは次回以降の記事に掲載されています)
もともとHacoaは「視覚」「聴覚」「触覚」「臭覚」と、「味覚」以外のものを提供できる商品を扱っていました。しかし、商品を売るだけではなく体験を提供していきたいと考え、5感全てをあつかう会社として「モノづくりからコトづくり」へと、味覚への進出を決意しました。
Hacoaは木工の会社。木と味覚を繋げるにはチョコレートではないかと。チョコレートの主原料はカカオの木の実。副材料にはナッツやメープルシロップといった、木の恵みが使われる。木との繋がりを持って、物語が作れないかと考えました。ブランド名は、ギリシャ神話の木の精が由来のDRYADES(ドリュアデス)です。2018年1月に東京の文京区西方に厨房を構え、お店をオープンしました。
2021年4月には、東京の中目黒に「KNOCKING ON WOOD」という、「DRYADES」+「カフェ」+「Hacoa」が楽しめる総合店舗を作りました。2020年の年末にこの場所を見付け、ビルと契約してから、オープンまでの4月末までは、東京で単身赴任。毎日図面を描いて、毎日現場に行き内装監理。家具や什器は本社で作って貰ったものを自身で組立てるといった、突貫作業が続いた。なんとか桜の時期にオープンしたかったのですが、間に合わなかった(笑)(目黒川は桜並木で有名です)
このプロジェクトは、「Hacoa VILLEGE 構想」というハコアの未来図を描いた事業の一環。木と食を繋ぎ、そこに集まる人がものづくりと木の魅力を感じ、しあわせな時間を提供する。そんな場所を全国に拡げ、多くの人にものづくりの楽しさを共鳴して貰いたい。そんな事を夢を見ています。
ーー産地でのものづくりから、大きく世界観が広がっていますね。
思い返せば、最初は畳一枚の大きさのべニヤ板からお店が始まりました。かみさんと相談し、金津創作の森のクラフトフェアへに出店しました。初回は18,000円しか売れなかったけど、お客さんの「こんな商品があったら良いのに」という言葉を反映させて、徐々に成長してきて、今のHacoaがあります。
これまで木製の商品をたくさん作ってきましたが、一つ決めていることがあります。それは、家具だけは作らないということ。自分の為の家具は何度か作っていますよ。でも、お客さんに買って貰う家具づくりは自信が無い。椅子は座った人の感覚で評価が変わるので怖いということもあります(笑)。
木工の世界では、「家具を作っている職人が最上」という風潮があり、私たちも職人としてはなんとなく感じていますが、そこは我慢ですね。木を触ったら、いつのときも家具を作りたくなってしまうのですが、もしかするといつの日か家具も作って販売しているかも(笑)
ーー今後、Hacoaはどこへ向かっていくのでしょうか。
Hacoaは少なからず未来を見ている会社です。しかし、まだまだこれからだと思っています。同じ未来でも、木製雑貨製造販売、チョコレート、ワークショップと全然違う方向から、違う感覚で未来を見据えて成長を続けています。
※次回に続きます。