【移住者インタビューvo.4】漆工房はる 薮下小春さん

生まれ育った鯖江市を離れ大学進学、就職活動を機にUターンした薮下さん。
地元の伝統工芸である越前漆器の世界は、身近ではあったけど、小学校の総合学習での体験くらいでしか触れてこなかったと言います。
なんとなく「地元でものづくりに関わる会社で働けたら」という思いから、蒔絵師職人を志すまでの経緯を伺いました。

ぼんやりと考えていたUターン就職
いま振り返ると職人への道に進んでいた

―ものづくりが盛んな鯖江市で就職したい気持ちはあったものの、ご自身でもまさか職人になるとは思ってもいなかったと伺いました。。職人を目指してみようと思ったきっかけを教えてください。

薮下「就職活動をしているときに、なんとなく地元の鯖江に就職できたらと思っていました。そこで地元だけどあまり知らない漆器の体験をしてみたいな

と軽い気持ちで短期伝統工芸職人塾に申し込んだのがきっかけです。漆器組合の担当者から連絡をいただき、木地、塗り、蒔絵のどの職人さんに興味があるの?と聞かれました。正直、あまり違いが分からず…。筆を使ってみたいという思いだけで、蒔絵を希望しますとお返事しました。そこで、蒔絵の伝統工芸士である駒本さんが引き受けてくださり夏休みの3週間お世話になりました。」

※蒔絵とは、「蒔絵」とは漆器の表面に金や銀の粉を蒔きつけ、絵や模様をつける技法。

ー短期伝統工芸職人塾での出会いが大きかったのですね。駒本さんの存在は以前から知っていたのですか?

薮下「駒本さんとお会いしたのは短期職人塾が初めてだったので、以前から知っているわけではなかったです。
河和田には漆器の職人さんが身近にたくさんいらっしゃるのですが、家業でもなかったですし、日常生活で意識することは少なかったかもしれません。
でも、職人塾という制度は市役所かどこかで見て覚えていました。」

―ものづくりの未経験のところからのスタート。駒本さんの工房での修業は、何から始まりましたか?

薮下「駒本さんはこれまでにも芸術やデザインを学ぶ学生さんを指導されていたので、『なんや芸大生じゃないんか!地元の子か!』と驚かれていました(笑)」

薮下「最初の1週間は好きな図柄を画集から選んで筆ペンでトレースしたりまっすぐに線を描く練習で、駒本さんに言われるがまま手を動かしました。その後4客のお椀に蒔絵を施しました。私が描いたものを、駒本さんがこそっと修正してくださって、4つの蒔絵を完成させました。きっと基礎や技法もあったと思いますが、その時は何が何だか分からないままで…。ですが、地元にこんな面白い仕事があったんだと衝撃を受けました。

実践的な指導だけでなく、越前漆器の若手職人が減ってきている課題も駒本さんから教えていただきました。ものづくりに関わる会社に就職できればいいなと思っていたので、職人としてのづくりの現場に立つ可能性もあるのだという気持ちが強くなりました。

3週間の修業が終わるころ、駒本さんから『もしやりたい気持ちがあるなら、長期職人塾で修行にこないか』と提案していただきました。」

いろんなご縁が選ばせてくれた独立という選択肢

―3週間の短期職人塾、2年間の長期職人塾を卒業後、就職という選択ではなく独立を選んだ経緯を教えてください。

薮下「色んなご縁が重なった結果、独立することを選びました。最初は、どこか漆器屋に就職したいなと思っていました。調べていくと、正社員で蒔絵師を抱えている会社はほとんどなかったんです。

漆器屋さんに社員として勤めている職人の多くは塗師なんですが、最近は、塗りの前工程を担う木地師を雇う会社も増えてきました。しかし蒔絵は施さない漆器も多いので、1つの会社に就職するのではなく、複数の会社から仕事をいただけるようにならないと蒔絵師の仕事は成り立たないのかなと思うようになりました。産地の事情が次第に分かってきて、独立したいという野心があったというよりも、蒔絵師を続けていきたいんだったら独立という道しかないのかなと…。」

―職人が減っていると声は聞きますが、蒔絵師はさらに就職という形で仕事にしていくのが難しい現状があるんですね。ご自身で工房を持つのも様々なハードルがあったと思いますが、どのような道のりだったのでしょうか。

薮下「幸いなことに蒔絵は広い場所を必要としません。このくらいあれば漆を固化させるための漆室(うるしむろ)を設置しても十分な作業スペースは十分です。

河和田で物件を探すと古民家まるごと借りなければならず、和式トイレだったり畳の張り替えなど何かしらの修繕が必要でした。

そんな時に鯖江のものづくりプラットフォームであるPARKを紹介していただき、ちょうどよい大きさの部屋をお借りることができため、入居を決めました。

漆室も新品を購入したら何十万してしまうんですが、引退される蒔絵師さんから譲っていただけることになり、使わせていただいています。家族に手伝ってもらいながら、分解して、運搬して組み立てました。」

ひとつの達成感が次の挑戦につながっていく

―4月に創業して慣れないことも多いと思いますが、お仕事は順調ですか?

薮下「ありがたいことに少しずつお仕事を頂けています。

ただ、手探りでやっているので見積書の出し方や材料費の計算、作業も1人でやろうと思うとなかなかスムーズにいかないこともあって、本当にどうしたらいいんやろ…これで合ってるんか…って悩み続けています。」

ー今はどのようなお仕事が多いですか?

薮下「最近は、お椀に蒔絵を施すことが多いです。工程や受注数が多い仕事だと、仕上がるまでに2、3ヶ月程かかります。それを納品し終えた時は達成感があります。」

ー職人塾での修行の期間や蒔絵師になることを伝えたときご家族はどんな反応でしたか?

薮下「みんな応援してくれています。実は、私についてきた父も駒本さんの工房に通って、今は酒器に特化した漆器の制作や金継をする職人になりました。

長く勤めていた酒造会社を早期退職して、好きだったものづくりに挑戦しているのですが、うれしくもあり恥ずかしくもあり…、娘としてなんだか複雑な気分です(笑)」

ーお父様まで職人になられたんですか!それは驚きですが、お二人にとって駒本さんの存在がどれほど大きいかが非常によくわかります。

今後、挑戦してみたいことや抱負などはありますか?

薮下「今はいただいている仕事をきちんとこなすことを考えています。

できることが増えると挑戦したいこともできてくるのかなと思っています。」

教えて!鯖江ぐらしのホンネ!

Q.鯖江のお気に入りの場所は?


この間、行った「こはち」というベーグル屋さんが美味しかったです!

Q.移住を考えている人にアドバイスはありますか?


雪の時の運転に気をつけてください!
鯖江に住む以上車は必須だと思います。

Q.お仕事がある1日のスケジュールを教えてください!



6:00起床
8:15仕事
18:00-19:30帰宅 
23:00就寝


漆工房 はる
連絡先:TEL  080-8997-2673
MAIL urushikoboharu@gmail.com(担当者:薮下)              
住所    〒916-1222 鯖江市河和田町19-1-7 PARK内

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