【移住者インタビューvo.5】WOL 孫和哉さん


大学時代に友達に誘われて河和田アートキャンプに参加。
大学で学んでいた洋画ではなく、河和田で越前箪笥の技術を学び木工職人として独立された孫さん。5年間の修業や河和田での暮らしについて伺いました。
人の習慣が垣間見えるものづくりに興味が湧いた学生時代

ー大学卒業後、木工職人としての道を選び、鯖江市河和田に移住されたとのことですが、まずその経緯について教えていただけますか?
孫「学生時代に木工や家具作りに興味を持っていて、その気持ちが次第に大きくなり、『家具を作りたい』という思いが芽生えました。特に椅子などの家具を作ってみたいと。
鯖江で働き始めていた先輩やお世話になった市役所の人に相談している中で、越前箪笥の技術を学ぶことができる職人塾に入れば家具作りに近いことができるんじゃないかと教えていただき、興味を持ったのがきっかけです。
越前市のほうが越前箪笥の会社数は多いんですが、どうしても河和田に住みたかったので無理を言って、越前指物協同組合に所属していた鯖江の親方に拾ってもらいました。河和田は、木工が盛んな地域でもあるので、そこで職人として一歩踏み出してみようと決心しました。」
ー鯖江に相談できる人がいることは心強かったですよね。河和田に住みたいという気持ちが大きかったのはなぜですか?
孫「河和田に移住してきた先輩たちがチームをつくって動き出していたり、今工房を借りているPARKという場所が動き出したり、新しい動きが始まろうとしていたからですかね。学生時代の楽しかった思い出もあったのが大きかったです。
でも、サークルの仲間たちが京都に帰ってしまうと、物音もしなくなってしまって取り残された感覚になりました。何十人で共同生活していた合宿から、1人暮らしの生活が始まりまったので寂しかったですよ。」
いらないと思っていた田舎の習慣も、「ある」理由を考えるとおもしろくなってくる
ー学生時代から河和田に通っていたことで、全く知らない土地ではなかったと思いますが、実際に暮らしてみてギャップなどはありましたか?
孫「都会へ出ていった人はあまり帰って来ないですし、残っている人は一度も外に出たことがないくらい二極化している印象です。土曜出勤や給料が低いのは当たり前ですし、親方の会社も集金日って呼ばれる日は手渡しでお給料を配っていました。昭和かよってくらいの時代の変化の遅さや、独特のコミュニケーションへの戸惑いはいっぱいありました。
何か差し入れに頂いたら必ずお返しをせなあかん、って言われるんですけど、好意でやってくれてるなら別にお返しもいらないよなとか思う時もあるじゃないですか。
そういう、ひと対ひとの関わりの中での小さなニュアンスの違いも、慣れてくると別に嫌なことじゃなくなる。メリット、デメリットが見えてきたというか。大阪で暮らしていたときとは違う当たり前に気付いて、その当たり前の必要性について疑問に考えること自体もおもしろ味があるなって思うようになりました。」

ー生活でも仕事でも慣れない環境だったと思いますが、職人塾での修業期間、悩みや葛藤はありましたか?
孫「周りの友達と比べたら、卒業して5年も経てばそこそこ中堅ぐらいの役割をしてる子らがいっぱいいる中で、 自分はまだ下働きで…っていう悩みはありましたが、木工をやりたいという思いのブレはありませんでした。
手加工ができる職人が減少している中で、親方はずっと昔ながらのやり方を指導してくれました。ノコギリやノミが上手く使えないとものすごく怒られる。そんな環境で修行できたのが多分1番良かったかな。実際に手を動かして学べる貴重な経験だったので、それを一つ一つ吸収することが楽しかったです。
親方と当時を振り返ったりはしないですが、今は認めてくれてるっていうのがなんとなく感じます。周りの人から、お前が独立してから寂しがってたぞと聞くとうれしかったりして。」
ー5年間の修業後、会社を立ち上げられました。「WOL」という会社名に込めた思いを教えてください。
孫「『WOL(ウォル)』という屋号は、自分のルーツが関係しています。生まれも育ちも日本ですが、父が韓国人だったので、そのルーツは大切にしたいなと思っていました。
あと、昔に、人は太陽と月、陽と陰に分かれてるんだって話を聞いたとき、自分はあまり目立たないけど、片隅を照らすような月の役割かなって。月を韓国語にして、『WOL(ウォル)』と名付けました。」

ー孫さんらしさを感じる会社名ですね。この工房も、とても素敵ですよね。背の高い機械や木材がすっぽり入る工房を探すのは大変ではなかったですか?ここに至るまでの経緯を教えてください。
孫「今、工房としてお借りしている「PARK」はものづくりのプラットフォームにしようと構想があったようで、工房や飲食店、シェアハウスが一体になった施設です。
独立するにあたり、木材を加工する機材が入るくらいのちょうどいいサイズ感の工房を探していましたがなかなか良いところがなく困っていました。
その頃、PARKのシェアハウスに住んでいた時にお世話になった方から、工房を借りてみないかと声をかけていただきました。
ここで木工をやってくれることに意味があるからと、工房を構えるにあたっての改装も優遇してもらって。
その後、怪我で2年ほどお休みしていたり、別の方がここを借りるかもとか紆余曲折あったんですけど、ものづくりで苦労してきた色んな方々と相談させてもらって引き続きこの工房を借りています。」
ーこれから挑戦してみたいことはありますか?
孫「最低限の機械も揃って、時間を取られていた作業も減って、できる範囲が広がりました。考え方の面で言うと、伝統工芸に関わってきた経験から、伝統工芸自体が持つ価値を一層深く理解し、伝統工芸に馴染みのない方にも押し売りではなく、もっと自然にその良さを伝えられる方法を考えるようになりました。伝統的な技術を活かしながら、素材を作ったり、面白いものを生み出している人たちと一緒に新しい挑戦をしてみたいと思っています。」

教えて!鯖江ぐらしのホンネ!
Q.鯖江の魅力を教えてください!
良くも悪くも古い文化や風習が残っています。
町内会の行事や集まりなどが多く煩わしさもありますが、都会にはない良さもあります。
最近、美容室やられてたおばちゃんがたまに遊びにきてくれるようになって、酢の物とかもってきてくれるんです(笑)
ボーイフレンドができたわ~ってかわいがってくれてて、そういうのが一番うれしいかな(笑)
Q.移住を考えている人にアドバイスはありますか?
やりたいことを明確にして移住する方が視野が広くなる気がします。
働き方もアナログなところが多いですが、家賃が安かったり、人の繋がりが広いので、知り合いに尋ねると知り合いの知り合いから応えがかえって来たりします。
やりたいことがある人には向いている場所だと思います。
Q.休日の過ごし方を教えてください!
たまに友達と飲みに出かけます。
タクシーや代行もありますが、駅の近くに家を借りるのも1つだと思いますよ!
WOL
連絡先:MAIL wol.life@gmail.com
住所 鯖江市河和田町19-1-7