岸本機料店 | この産地のドラえもんになりたい。繊維会社の困りごとを解決する機料店という仕事。
鯖江には繊維の様々な工程に携わり商品を作る会社が多くありますが、今回は、非常にめずらしい業務内容の会社です。
鯖江の町中にたたずむ有限会社岸本機料店は、創業73年を迎える社員3名の小さな会社。でも実は、この会社が北陸の繊維産業を支える縁の下の力持ちでした。
繊維業界の今を把握し、新しい分野に挑戦できるような打ち手を作る。岸本機料店の思いと視点をお届けします。
繊維業界は様々な分野を支えている!? 新しい挑戦へのお手伝いをして、産地全体の底上げがしたい。
お話を伺ったのは専務の岸本大紀(きしもと・だいき)さん。岸本機料店の3代目です。
「まず業務内容が分かりづらいと思うので『機料』の説明をすると、主に繊維機械や部品、製造に関わる消耗品等販売をしている会社です。繊維製品作るのにはすごくたくさんの工程があって、その数だけ機械がある。新品・中古販売、修理や改造などもやっていて、繊維に関わる機械はほぼ全て扱っています。」
機料店と呼ばれる会社は鯖江には3軒、北陸全体で見ても数十件ほどしかないのだとか。
また、求められた機械や部品が国内に無ければ、新規で製作したり、海外で探して購入・修理をしたりすることもあるそうです。
「お客さんはみんな、新しい分野に挑戦したいという意欲を持っておられます。いろいろな業界の情報をうちがリサーチ・提供をして、繊維をベースにした新規事業に乗り出せるようにサポートしています。繊維業界だけでなくそれ以外の業種の展示会や最新状況についてに常にアンテナを高く様々な情報収集・分析することで繊維産業が次に提案できる業界はどこだろうか、そんなことを、世間話をしながら時代の動向をアドバイスできればと考えています。」
繊維製品は、衣料やカーテンだけでなく、様々な分野に使用されています。例えばカーシートやエアコンのフィルター、スマホ内部の電子部品、ティーパック等、世界の一流商品の一部として本当は身近なところに福井の繊維がたくさん使われているのだけれど、様々な事情でオープンにできないのが歯がゆいと話す岸本さん。言葉の端々から、産地全体を成長させたいという強い思いが感じられました。
「今のお客さんのためになることならば、繊維関係のことでなくても良いと考えています。省エネや省人化、EV搬送とか。繊維業界は縮小はしていますが繊維製品が無くなることはないと思うので、前向きに面白いところを攻めていきたいですね。」
これまでのキャリアを活かし、地元で働く。
鯖江生まれの岸本さん。大学で情報工学を学び、卒業後、NTTの国際通信関係事業部のプロジェクトマネージャーとして、海外の通信会社との新規接続交渉などの仕事に6年間従事された後、福井県に戻って来られました。
「福井が好きで、いつかは戻ってこようと考えていました。退職後、家業が繊維関連だったこともあり、セーレン(福井市に本社を置く繊維メーカー)に入社し、染色加工工場の生産技術やカーシートの開発営業を担当していました。勤続9年目の後、家業を継ぐことを決意し岸本機料店に入社しました。」
NTTで得た情報系のスキルを活かし、セーレンでも生産性向上や仕事効率化について貢献されてきた岸本さん。この両者での業務経験が、今の仕事に直接活きているのがわかります。
「他にも、数年に一度、少しでも北陸の繊維業を活性化できればと産地の方を対象に海外の繊維機械展示会視察ツアーを企画しています。毎回大勢の方が参加し、参加者からは、最新の繊維機械を学べると同時に、参加者同士のヨコのつながりができると大変喜ばれています。」
このツアーの企画は繊維産地の調整役としての「機料店」という立場だからこそできることだと話す岸本さん。広い視点で鯖江の産地を捉えておられます。
お客様の利益が自社の利益。相談から導入を実現させる二人三脚スタイル。
「こういうものが作りたいけど、まだ世の中に無いから機械をどう改造をしたら良いか相談したい」という依頼が一番嬉しいと話す岸本さん。なんでもありの機械屋は、アイデア勝負な一面も大きいのだとか。
「イメージとしては、繊維業界のドラえもんになれたら良いと思っています。
何が最適なのかわからず、困っているんだけど…と言われたら、国内・海外から新品・中古の機械を引っ張ってきて、使いやすいようにお客さんに合うように改造して納品する。どこにも売っていない一品物を自社製作することもあります。」
機械を納品する際に、工場内レイアウトの最適化なども提案されるという岸本さん。お客様のボトルネックを見つけ出し生産性向上を図るその存在は、産地企業の右腕と言えるのかもしれません。
繊維業界はマニアックな世界。若手が入ってきたらすごく目立つし、技術的な部分は凄腕職人たちが快く教えてくれる。
現在は人材募集をされているわけではありませんが、現場経験があり、前向きで、岸本さんの話に共感する方は採用したいとのこと。
誰もが知っているアパレルブランドやカーシートなどをつくる鯖江の産地。契約上ブランド名を出せないことが多いのですが、そんな商品作りをする繊維企業のサポートをする仕事です。あなたも、ドラえもんになってみませんか?
【連絡先】
岸本機料店(Webページはこちら)
0778-52-4545
d.kishimoto@kishimotokiryo.com