キッソオ | めがね素材を使って新境地開拓。遊び心溢れるものづくりの仕事。
「自分は八方美人なので、社員からはダメ社長と言われています(笑)
人の幸せを考えるくらいならまず自分たちの幸せを考えてくれ…と。でもね、回り回ってそれが社員の幸せにつながると思っているんですよ。うちは素材屋なので加工はなるべく外注に出して、仕事を回し合ってギブアンドテイクでありたいです。」
社長の吉川さんはめがね業界全体のことに真っ直ぐに向き合って、他人でも家族のように見ることができる人なんだなぁ…と、愛情たっぷりの話を聞いているだけで、なんだかとても心が温まりました。

ものづくりの原点である「材料」。一般の方にはなかなか触れることができない物です。材料を扱う仕事というのは、決して表舞台には出てきませんが、無くてはならない大切なもの。
リーマン・ショックで業界全体が落ち込み、売り上げが半分になったところからの再起。あくなき探究心で新しい市場に挑み続ける人たちがいます。
やるからには1番を目指す。
時代の変化に合わせて臨機応変に変化し続ける鯖江の会社をご紹介します。
リーマン・ショックからの復活。キッソオのものづくりストーリー。
株式会社キッソオは、たくさんの工場が集まる鯖江市丸山町にあります。

創業は1995年。社員数は17名と小さめですが、その実態は、めがね素材の開発・加工のエキスパートです。

キッソオを案内してくださるのは、社長の吉川精一(よしかわ・せいいち)さん。健康的な明るい笑顔が印象的で、現在43歳。社内ではまだまだ若い方なのだとか。
吉川さんは大学を卒業後、長男として地元に戻ってきた後、当時めがねの企画販売ではトップを走っていた眼鏡商社に入社。企画開発部で眼鏡の開発を経験した後、キッソオに入社されました。

「リーマン・ショックの直前、『今後OEMに頼りすぎるのは危険だ。明日にはお客さんの注文が無くなる可能性もある。その前に自分たちでものを作り、自分たちで販売する力をつけるために勉強しよう』という、乾レンズの諸井さんの誘いがきっかけで、鯖江ギフト組という新しいものづくりのプロジェクトがスタートしました。その後、リーマン・ショックが起こり、蓋を開けてみると売り上げが半分まで落ちた。これは自分たちでなんとかしないといけないと、鯖江ギフト組を足がかりに復活しようと立ち上がったんです。」
リーマン・ショック以前は、材料を扱う商社は市場の先を見通しやすく、公務員よりも安定しているような仕事だったのだとか。それ以降、競争が激化し材料が海外にも国内にも売りにくい状態になってしまったそうです。

「うちは工場に材料を収める会社です。何かめがね商品を開発したりすると、お客様と競合してしまうので、めがねが作れない。また、めがね部品も同じ理由で作れなかった。材料が売れずヒマだったので昼休みや就業後に社員とアイデア出しやいろいろなサンプル制作を繰り返したところ、たまたま指輪ができました。」
プラスチック素材で指輪を作っている会社なんて当時は無かったと振り返る吉川社長。サンプルを作ってIOFT(アジア最大級のめがねの展示会)に出展された際、好評を得たことがきっかけで、めがねと同じようにめがね素材アクセサリーのブランドを作り育てていこうと考えられたのだとか。

「やるからには『めがね業界の中にアクセサリーブランド市場をつくる』という目標を立てました。反応は上々でしたが、バイヤーからの引き合いはありませんでした。どこに置いてもらえば良いかを考え、美術館に併設されたミュージアムショップやめがね屋に営業をし続けました。」
その後、あるきっかけで京都の龍谷大学と連携することになり、学生と共同で百貨店へのヒアリングを実施。「リングだけではアクセサリーブランドとしては通用しない、バングルやピアスなどの商品数を増やしていくことがアクセサリーブランドとして求められている」という結果が出たそうです。

「2年目のギフトショー(日本最大の生活雑貨の国際見本市)で、ビジネスマッチングに申し込んだところ、誰も相手にしてくれない中、セメントプロデュースデザインの金谷さんがアポを取ってきてくれました。うちの材料で何か出来ないかを相談したんです。今は景気も悪いしアクセサリーでは勝てない。めがねの材料を活かしたものづくりをしようというアドバイスを受け、生まれたのが耳かきでした。」
完成した耳かきはパッケージ等の見せ方と売り方もありヒット商品に。2013年度にはグッドデザイン賞も受賞しました。あなたもどこかで見たことがあるかも知れません。

ちょうど同じ頃、新宿伊勢丹の催事に出品したことがきっかけで、ある商品開発のプロデューサーと話すことがありました。『キッソオは何を作ってる会社ですか』と問われたので『めがね素材で女性向けのアクセサリーを作っている会社です』と答えると、色々アドバイスされ、最終的に『女性向けのアクセサリーで日本一になりなさい』と言われたんです。歳を聞いたら37歳と、その当時の自分の一つ上。悔しかったのでその方の著作を全部読みました(笑)。」

「アクセサリーは商売が難しいから止めてめがねの材料を活かしたものづくりをやったほうがいいと言わたり、やるならアクセサリーで日本一になるくらい頑張れと言われたり、相談する人によって意見が別れました。私は商売人なので、どちらかをやめるのではなく、どちらもやってやろうと頑張ってきました。」
毎年いろいろなことがありながら臨機応変に対応して、今のアクセサリーブランドを作り上げて来られた吉川社長。めがねしか知らない男性でスタートし、試行錯誤しながらやってきたブランドに、今年からアクセサリーの企画デザインに関わる女性デザイナーが入りました。

「今は特に募集をしていないのですが、来たい方は自主的に応募して来ています。興味がある方はどんどん来てください。キッソオで一番若いスタッフは33歳なので、今後は若返らせていきたい。若くてチャレンジ精神旺盛な女性や、営業力のある方に来てほしいですね。」
アクセサリーだけじゃない、幅広い業務が魅力。営業力を活かして新しい展開を創造。

材料商社であるキッソオは、当然アクセサリーを作っているだけではありません。強い営業力を活かして、プラスチック材料・金属材料、部品、機械の販売を行っています。
「会社全部を見てほしいから全てを任せたい」と吉川社長から信頼を得る、営業の野尻竜生(のじり・たつお)さんは淡々と語ります。

「私はイベント・テレビ関係の制作会社に10年ほど勤めてから転職で入ってきました。キッソオは新しいことにチャレンジできる魅力的な企業だと思います。」
転職当初はめがね材料の営業、次に機械の販売、昨年度からはアクセサリーにも関わり出したという野尻さん。材料が魅力的であるため色々な事業に挑戦でき、販売も楽しめると話します。
「私は目が悪くないのでめがねに興味が無かったのですが、結婚を機に転職を考えようとハローワークで探したところ、めがね材料商社だけど新規事業でアクセサリーをスタートさせたところが面白そうだと思ったんです。メガネ業界は縮小していると勝手に思っていたんですが、新しい展開をしていくというところに野心を感じました。あと、夜はちゃんと帰れる仕事が良かったので(笑)」

前職では展示会全体を運営する側だった野尻さん。そのスキルがキッソオで出展する側となって、活きているそうです。さらに、今後挑戦してみたいことについて伺ってみました。
「展示会への出展は今のところ国内しかないので、社長の中に構想はあると思いますが、今後はヨーロッパの展示会にも出店して海外の評価が見てみたいと思っています。実際、毎年イタリアの展示会に毎年視察に行っていますが、アセテートのアクセサリーはまだ見たことがありません。まだ見ぬ市場へ挑戦してみたいですね。」

キッソオの仕事はものづくりを支える底力と、自らも市場を作り出す力強さが光ります。募集のハードルは高いですが、その分熱意のあるチャレンジングな方には、またとないチャンスかもしれません。
記事を読んで気になった方は、ぜひ連絡してみてください。
【連絡先】
株式会社キッソオ
0778-54-0355
kisso@kisso.co.jp