谷口眼鏡 | 「社員同士が学び合う。」名もなき若手が頑張れる職場を目指して。

「眼鏡の聖地である福井県鯖江市にある、めがね製造の会社です。」
こう書くとどこにでもある普通の会社のように聞こえてしまいます。

でも、その会社でとても居心地良さそうに働く20代の若者がたくさんいる…アメリカで経営を学んだあと、谷口眼鏡の扉を叩いた人がいる…そう聞いたら「なんでだろう?」と少し興味がわいてきませんか?

かけ心地の良さに特化しためがねづくりを行う、有限会社谷口眼鏡。16名という規模感で、工場なのにハウスブランドを持っているめずらしい会社。

多くの人が「何をするか」と同じくらい「誰とするか」を大事にする時代だからこそ、「この会社の風土が好きになれるかどうか」を、この記事で伝えられればと思っています。

現在16名のスタッフと社長で構成される谷口眼鏡。なぜここで働く彼らは、「自分の居場所」を見つけることができたのだろう?

「アットホーム」という言葉がブラック企業の売り文句のように使用される今、本当に家族のような会社である谷口眼鏡の在り方に迫りました。

産地全体の視点で考えて、次の時代の担い手を育てようとする職場環境。

やさしい表情が印象的な中田奏(なかた・かなで)さん。入社2年目・27歳の彼は、谷口眼鏡で自分の居場所を見つけたひとり。

出身は大阪府豊中市。高校を卒業した後、1年間英語を勉強し、アメリカへ。カリフォルニアの大学で経営学を専攻していましたが、昔から好きだったものづくりを仕事にしたいと思い出しました。

「ホームステイやルームシェアをして楽しく暮らしていましたが、日本のものづくりに携わりたいという思いが強くなり、帰国を決心しました。」

(アメリカ留学時代の中田さん)

日本に帰ってきたのは25歳。実家のある大阪で、ものづくりについての求人情報を探していました。

「たまたまwebで谷口眼鏡の情報を見つけ、工場見学だけでも…と鯖江を訪ねたところでタイミング良く谷口眼鏡で1名採用を考えておられ、面接の後に採用いただきました。」

工場見学で鯖江を訪れると、工場にはめずらしく県外出身者が多く、若い職人さんがたくさん働かれていた。先輩たちが生き生きと働いている姿がそのまま会社の印象につながったそうです。

ギスギスしていたりかしこまっていたりしない印象でした。それに、自社だけでなくめがねの産地全体の視点で考えて、若手を育てておられるところから、『働くということに全くの初心者である自分でも受け入れてもらえそう』と感じて入社を決めました。」

「実際に入社してみると、より人柄の温かさを感じています。私は消極的なタイプなので全く知り合いがいない福井へ来るのが不安でしたが、先輩のつてで職人さんや地域の方を紹介していただいて、社内でも地域でも心地良い関係を作れています。」

仕事をはじめて2年。できることは増えてきたが、まだまだやるべきことがあると中田さんは話します。

どんどん入ってくる若手たち。生産能力を落とさないように底上げを頑張りたい。

「今の私の仕事は、めがね枠製造です。フレーム・テンプルのガラ磨き、バフ仕上げ磨き、フレームのヤスリがけ、洗浄、鋲止め、部品発注など、徐々にできることが増えてきて、最近荒磨きの工程を任せてもらうことができるようになりました。

たまに海外からバイヤーが来られたときに通訳をしたり、英語のメールを翻訳したりと、留学経験も生きています。」

入社当時は難しくてなかなか上手くいかなかったという中田さんですが、先輩に毎日現場で習うことで少しずつ技術を身につけ、今ではどんどん新しい作業を任される存在に。「もっと目を養いたい」と中田さんは笑顔で話します。

「8:00に出社し、社内の清掃をします。退社は最近忙しくて19:00頃ですね。僕はまだまだ作業が遅くて下手ですが、入社した2年前に比べると上達してきていると思うので、今後も努力あるのみです!」

できる作業が増えてきてやりがいを感じているという中田さん。焦らず基礎からしっかり取り組んでおられます。

「印象に残っているのは、谷口眼鏡のめがねを取り扱っていただいている店舗に伺ったときにお客様が弊社商品を見て『良いわ~』と言っているのを見たときです。嬉しいと同時にプレッシャーを感じました(笑)」

大阪から福井へ行くことに抵抗は無く、やりたいことを優先した。

「休日はテレビを見たり、買い物をしたりしてリラックスしています。大阪と違い鯖江は静かでゆっくりしているので、都心部から来られた方は戸惑うかも知れませんが、住めば都です。」

仕事中の頼もしい姿とは打って変わり、休日はとてものんびりと過ごしておられるとか。

(休暇中の中田さん。敦賀の水島がお気に入り。)

「今年の1月に東京から出てきた彼女と同棲をはじめたので、鯖江駅が近い横江町に引っ越しました。車中心の生活ですが、やはり電車が近くにあると便利ですね。」

淡々とお話してくれる中田さんですが、全く知り合いがいない福井へ来て、どうやって生計を立てていけば良いのか不安になることもあったそう。

そんなとき助けてくれたのは会社の先輩方。先輩のつてで職人や地域の面白い方を紹介してもらい、人間関係を広げている。

「自分は消極的な人間なので、最初はどうなるか不安でした。でも仕事もプライベートも先輩方に助けていただいて、良い方向に向かっていると思います。自分は計画性が無くいきあたりばったりに生きてきましたが、良い方に恵まれて幸せです。」

「今ここでできることをしっかりやっていきたいし、身につけられる技術は全部身につけたい。将来はデザインや図面制作もやってみたいと思っています。まずは、会社の先輩方が身近な目標です。」

自分の選んだ場所で確かな目標を見つけて、ゆっくりを歩みを進めておられるようでした。

ブランド、機能性、時代はその次の何かを求めている。製品と一緒に情緒的満足感もお届けする会社。

谷口眼鏡の代表である谷口康彦(たにぐち・やすひこ)さんは、めがね製造に40年近く携わるベテラン。めがねのトレンドや消費者のめがねについての考え方の変化を渦中で感じてこられました。

谷口眼鏡は今年で60周年。振り返ると、様々な変化があったと語ります。

「ブランドネームが注目を浴びる時代があり、続いて機能性が重視される時代があった。そして今、時代はその次の何かを求め始めている状況です。使っていく中で愛着が湧き良さがどんどん深まる。自分の中の価値が目減りするどころか高まっていく。そうした情緒的満足が、これからの時代必要になってくると思います。」

谷口さんによると、昔はめがね本来の良さを伝えることを大切にして工場や素材の説明をしていたけれど、団塊の世代の購買によって消費が拡大したときに小売業はブランドでものを売り始めたそう。谷口眼鏡はもう一度消費者とその関係性を作っているといいます。

また先端デザインではなく暮らしに寄り添うめがねをめざしているので、谷口眼鏡にデザイナーはいない。営業担当者と谷口さんでデザインも決定していると教えていただきました。

谷口さんの言葉から、テクニックありきではない、ものづくりに正面から向き合う真面目な姿勢を感じました。

産業が元気にならなければ地域の未来は無い。産業と地域がサスティナブルである状態を谷口眼鏡は目指していく。

谷口さんは河和田地区で開催される体験型マーケット「RENEW」の代表を務めておられます。いろいろな産業が衰退していく中で、持続可能な方法を率先して考えておられる谷口さんの覚悟を感じます。

「以前河和田地区の区長会長を仰せつかって世話役をしたときに、地域の今後についてデータを分析し、ヤバさを突きつけられました。その後河和田トビラという地域の経営者が集まる勉強会を開催した際に、私とTSUGIの新山くんの方向性が重なり合い、RENEWが生まれました。」

「BtoCtoB(企業→個人→企業)の流れが大切だということが確信になってきました。お客様にも、小売様にも、社会にも寄り添っていきたいと考えています。」

一般の方に見ていただきファンを増やす。RENEWが谷口眼鏡の強みになると谷口さんは話されます。

社員同士が学び合う空気感を目指して。

明るく整理整頓が行き届いた清潔感のある工場。谷口さんは共に谷口眼鏡を育てていくために来てほしい人材について、次のように語っていました。

「めがね工場の在り方を変えたいと思っています。生産効率は下がりますが、熟練工がたくさんいるのではなく若者たちが集まっている方が、持続可能性が高いのです。またデザイナーや社長が目立つのではなく、名も無き若手が頑張れる職場を目指しています。上手に済ませたように見せる人ではなく、深く正面から受け止められる方が来てくれると、会社の成長につながると思っています中田は大阪から移住してきて、慣れない土地でコツコツ真面目に頑張っている。きっと大きく成長すると思います。ただ、もう少し野心を持ってもらいたいかな(笑)

(谷口眼鏡は今年で60周年。記念パンフレットも作成されています。)

谷口眼鏡は離職率がとても低いそうです。理由は、ノルマや目標設定をバシッと決め無いかわりに個別指導をしっかりしているから。谷口社長の話を聞くうちに、本当に若手を大切にし、産業と地域の未来を考えておられるのだと感じました。

国産めがねの96.7%が鯖江を中心としたエリアで作られているから、みんながこの仕事をしていることに誇りに思っている。眼鏡産地はここにしかなく、鯖江無しで眼鏡は作れない。

「真面目に、ものづくりに正面から向き合いたい。」そんな思いを持った職人ばかりが働く誠実な会社。日本のものづくりに関わる一員として、思いを込めた製品を作り続けています。この想いに共感した方は、ぜひエントリーしてみて下さい。

【連絡先】
有限会社谷口眼鏡
0778-65-0811(平日9:00~17:00)
info@turning-opt.com
http://www.turning-opt.com/

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