【さばえSDGs推進センター-vol:1/5】なぜ鯖江に?2015年のSDGs国連採択から、オープンまでの道のり。

2020年9月、鯖江市のシンボルの一つであるめがね会館の最上階に、SDGs推進の拠点となる「さばえSDGs推進センター」がオープンしました。

2030年のSDGs17の目標達成に向けて、鯖江市に住むすべての人が、50年後も100年後も「住んでいてよかった、住み続けてよかった」と思えるようなまちを目指して、「持続可能なめがねのまちさばえ」の実現に挑戦しています。

今回、お話を伺ったのは、鯖江市総合政策課さばえSDGs推進グループ さばえSDGs推進センター所長の関本光浩(せきもと・みつひろ)さんと、副所長の仲倉由紀(なかくら・ゆき)さん。センターの立ち上げ経緯から現在のことまで、幅広く話を聞きました。

ーーまず、さばえSDGs推進センターはどういった場所なのでしょうか?

(仲倉)
さばえSDGs推進センターは文字通り、SDGsに関心を持った方や、SDGsに取り組もうとしている方たちが集まる場所です。今や世界の共通言語になってきているSDGsですが、一人でも多くの方に理解を深めてもらい、SDGs17の目標達成に向けたアクションにつなげることを目標にしています。鯖江市内のSDGsに関する情報はもちろん、国連が発信している情報もこのセンターから発信をしています。

ーー海外の情報も発信されているのですね。

(仲倉)
17の目標の中には、日本ではあまりなじみのない「飢餓」や「貧困」なども含まれているのですが、海外では目標達成に向けての理解や取組みが当たり前になっています。国連が発信している情報を見ていると、鯖江はまだまだなのだなと感じることも多いのです。日本に住んでいる自分たちには縁遠いことも、知って自分ごとにしてもらうためには積極的に発信することが大切なんです。

鯖江が目指してきたまちづくりに合致したSDGsのコンセプト

 

ーーそもそもさばえSDGs推進センターは、どのような成り立ちで生まれたのでしょうか?

(関本)
もともと鯖江は「若者が住みたくなる・住み続けたくなるまちづくり」を目標にしていて、SDGsの「誰一人取り残さない」というコンセプトに合致していたんです。そういう点で、他の自治体よりも早くSDGsに注目して取組みをはじめました。

(仲倉)
鯖江市がSDGsに取組み始めたのは2017年でした。SDGsが2015年9月に国連サミットで採択された後、市役所内の様々な課を横断して30〜40代の中堅職員が集まり、SDGsにどのように取組んだらよいか考える研究チームを作りました。東京からファシリテーターを呼んでカードゲーム「2030 SDGs」を行ったのもその時で、さばえNPOセンターやエコネットさばえと連携して体験会を催しました。

(関本)
牧野前市長が2018年5月31日に国連ニューヨーク本部で行われた「SDGs推進会議」で鯖江市の取組みを報告しているのですが、その際に若い女性もまちづくりに参加する取組みなどに高い評価をいただきました。さらに翌年の2019年には、アンワルル K.チャウドリー大使が視察で鯖江を訪れ、「地方都市でこれだけ実践しているのはすごい。」と評価していただきました。訪問を経て大使から「SDGsを推進する拠点を作り、地方都市のSDGsを広めるロールモデルになってほしい」とご要望をいただいたことが、さばえSDGs推進センター設立のきっかけです。

(仲倉)
鯖江市はSDGs推進の中心を「女性活躍」「ジェンダー平等」としてきたので、当初は推進センターを「女性活躍」に絞ったものにしようかという案もありました。しかし、「女性活躍」を入口に17の目標達成を図り、そうすることで地域力を高めるというのが目標とするところなので、多くの人と関わって広域的に産官学連携ができるよう情報発信をしていける拠点としていきたいという思いがあり、今の推進センターの形になりました。

ーー2018年に牧野前市長が国連でプレゼンをされたのには、どのような流れがあったのでしょうか?

国連の友アジアパシフィックと丹南CATVがいろいろな取組みを行っていく中で、2009年から毎年レポートを報告していました。チャウドリー氏が福井県に来られた際に、丹南地域にとても感銘を受けられて、「世界の多くの国や地域で女性が虐げられている中で、めがねや漆器などの鯖江の中心となっている産業を、女性が下支えしていることや、女性の就業率の高さ、JK課などの取組みなど、こんな田舎の町で女性が活躍しているのはすごい」と、「女性活躍」を高く評価していただきました。鯖江のことをぜひとも国連で話してほしいと言われ、国連での報告に繋がりました。

市民も企業も入りやすいように。

ーーセンター開設に至るまではどのような流れだったのでしょうか?

(関本)
鯖江市はSDGsを推進する前から、鯖江のものづくりを世界に発信できるブランドにしたいという思いがあり、世界共通目標であるSDGsを推進することにおいても、牧野前市長も「世界を見据えてやっていこう!」と方針を決められました。また、同時期に女性活躍を軸においた本市の取組みが、SDGs未来都市として内閣府に選定されたことも追い風になったと思います。

ーー鯖江市役所の中に推進センターを入れるという案は無かったのですか?

無かったですね。「夢みらい館・さばえ」はどうかというお話もありましたが、女性活躍や市民活動の施設として活動されているので、そこに新たに入るのは難しいと考えました。やはり、鯖江市といえば「めがね」ですので、ランドマークである「めがね会館」がいいのではということで、(一社)福井県眼鏡協会のご協力を得て今の場所になりました。チャウドリーさんにも現場を見ていただいて、アドバイスをいただきました。

ーーセンター開設に向けて課題になったことはありますか?

(仲倉)
SDGsは目標として幅が広いので、企業や市民の方に対して、いくら声高に理念の話をしても、具体的に何をすれば良いのか分からないという声があります。今でもそのような状況ですので、開設準備をしていたときは「センターを作って人が来るのか」「相談なんてあるのか」という声も少なくありませんでした。

開設には費用もかかりますし、拠点施設をつくることに心配や不安は私たちにもありましたね。多くの方に来てもらわないと意味がないので、そのためにどうしたら良いかと国連の方にも入ってもらって議論しました。

(関本)
私は開設直前の2020年の9月1日に所長として着任しました。オープンは9月12日でしたし、本当にうまく活用して多くの人に利用していただけるのかと、当事者となって急に心配になりました。

(仲倉)
私は、経団連や大企業がSDGsを喫緊の課題として取組んでいることは知っていましたが、鯖江市は中小企業が多く、都市部とは異なるので、何とか盛り上げていかないとと思っていました。

ーー実際オープンしてからはいかがでしたか?

(仲倉)
1階にはめがねミュージアムがあるので、一般のお客さんや企業の方も来やすい環境ですし、独立したものの方がやはり求心力があるなと感じます。最近はTVでもよくSDGsという言葉を聞きますし、学校でもSDGsが授業に取り入れられていますので、興味を持つ人もこれまで以上に増えてきました。

また、最近取り上げられることが多くなった「ジェンダー問題」について、国内では取組みが遅れていると言われる中、鯖江のような小さな町が先駆けて取り組んでいるということで、皆さんも興味を持って来ていただけるということが大きいです。

以前から、環境に関してもゴミの分別などに力を入れて取り組んできたこと、移住者が多いこと、サテライトオフィスの誘致、JK課などなど、鯖江ならではの取組みがたくさんあって「おもしろいまち」として認識されている鯖江市。これまで、市がこつこつと取組んできた実績と、SDGsの目標がフィット。そして、さばえSDGs推進センターもオープンして、未来を明るくする花が開きました。

※次回に続きます

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