関眼鏡製作所 | 手作業だけが職人の仕事ではない。時代に合わせて変わっていく、チャレンジングなめがねメーカー。
日本を代表するめがねの創立に関わり、難易度の高いフレームを製造し続ける関眼鏡製作所。
ここは、常に上を目指しながら新しいことにチャレンジしていくめがね作りの現場です。

道路から見通しの良い場所に工場を有している関眼鏡製作所ですが、インターネットを含めて情報が全然出てこない中で、ヒアリングにあたっての前情報をインプット出来ないまま、不安を抱えての取材になりました。しかし、実際に関眼鏡製作所で働いておられる方のお話を聞くうちに、徹底的に「仕事」と「人」に向き合った会社なんだ…と、衝撃を受けました。
「現在、鯖江のめがね産業を支える社長さんたちが切磋琢磨し、今のめがね業界があるのだな…」と、実際の背景を知ると、鯖江めがねがさらに愛おしくなってきます。これまで情報公開がほとんど無かった関眼鏡製作所について、この記事を読んでぜひ知っていただきたいです。
関眼鏡製作所流、職人の育て方。

まず、代表の関利明(せき・としあき)さんにお話を伺いました。
メタルフレーム専門の工場だった関眼鏡製作所。クライアントが求める難易度の高いフレームを製造するにあたり、これまでのプラスチックフレームの作り方ではメタルパーツとの組み合わせに精度がでないため、関さんがメタルフレームの精度やノウハウを活かしたメタルパーツとアセテート材料を使ったフレームの製造に向けて、立ち上がりました。
「ヤスリを綺麗にかけられることだけでは職人技とは思いません。日進月歩に進化する機械を使いこなし改良を考え、良いものが作れるかどうか、といったことに向き合うことが職人技(ノウハウ)です。そういう人をたくさん育てて弊社の技術力を高めていきたいと思います。」
大げさに言えば、ヤスリの過程が必要無いくらいに機械を使いこなせる人こそが職人だと関さんは話します。そして、関眼鏡製作所の製造技術をさらに高めていくことになるエピソードをお話しいただきました。

「あるとき、店舗に並んでいる自社製品を見たときに、そのめがね自体の作りが良い悪いではなく“めがね“が買ってくれと語りかけてこない…ように感じました。なぜそういう風に見えたのかを各部署の責任者と議論し、技術的な試行錯誤を重ねていきました。ものづくりをしていると、できないということが嫌なんです。さらに良くしていきたい!と、どうしても考えてしまうんです。」
その後、関さんは自社ブランドを持つのではなく「作ることに徹する」と決意され、歩みを進めていかれたそうです。

「今は最新式のマシンを導入して製造をしています。しかし、どこのめがねメーカーも同じような機械を持っている。同じ機械を使っていかに優れたものが作れるか、使い方がノウハウになります。高い技術での機械作業と手作業を併せれば、良いものが作れるというのがうちのスタンスです。」
データを作って、不具合がないか確認して作る。手作業だけが職人ではないと話す関さん。しかし機械があったとしても人の手じゃないとダメな部分もあるのだとか。手仕事か、機械仕事かにこだわるのではなく、良いものが作れる方法を合理的に追い求めていく姿勢が感じられました。
会社で得た技術や経験を、自分のためにしっかり活かしてほしい。

「めがねは外注依存度が高い仕事で、うちは完成品を出すメーカーです。設計・確認・修正・金型・部品・組み立て…となると完成まで半年はかかります(場合によっては1年)。しかし、新しいものが欲しいと発注があったときに、時流によって好みも変化するので、半年かかるなんて言ってらません。時代に合わせて会社は変わって行かないとならない。そしてさらに社員一人ひとりも成長していかなければ。」
以前はリピートで製造するのが当たり前だっためがね業界ですが、新しいものをどんどん作り始めるなど、激しい変化に対応してかないといけない時代になっているそうです。そのような時代にどんな人づくりをされているのか、伺ってみました。
「うちには色んな人間がいます。真面目な人もいれば、率先してムードメーカーになってくれる人もいる。楽な仕事ではありませんが、辛抱強くものづくりに取り組んでいます。今は就業後に若手に向けて勉強会を開いており、少しずつ理解が深まり仕事に反映されていきます。自分の学んだことを仕事以外にも、趣味や遊びにもどんどん使っていってほしいと思っています。」

会社が大きくなり、仕事全体を見渡すことができなくなってくると「こんなめがねを作りたい」「こんなことをやってみたい」という意見が減るのだとか。自主性を大切にする関さんは、そんな状況下であればこそ「自分で思ったものを創りだそうよ」と、社員を励まします。現在は2人の部長と現場長がおられ、3人で社員を育てる体制を組んでおられます。
「うちの男女比は7:3なのですが、女性は仕事が早くて正確だなと思います。めがねは女性だけで作った方が上手くいくんじゃないかと思うこともあるくらい。あと、自分が手掛けた商品に興味を持って欲しいんです。
転職を重ね、自分に向いている仕事にたどり着いた。
次にお話をうかがったのは、地元鯖江市出身で入社10年目の中嶋千絵(なかじま・ちえ)さん。関眼鏡製作所に入社されるまでは、理容師や越前和紙の仕事をされていたそうです。

「この会社はとにかく関社長が熱いです!いつも一生懸命で、社員との一体感があって。口癖は会社全体を家族のようにです。」
関眼鏡製作所のある河和田地区に親戚がいたことが、選んだきっかけだったと話す中嶋さん。関社長との会話では、終始笑顔が絶えません。
「今はロウ付けを主に担当しています。絶対に取れてはいけない部分なので、責任感を持ってやっています。また、修理の仕事もしています。うちの製造するめがねは高価なものが多いので、ずっと使っていただけるよう、丁寧な仕事が求められます。」
修理の仕事は製造の全行程が分かっていないとできない仕事らしく、最初は分からないことが多く、苦労されたのだとか。今ではご自身の中で軌道に乗っているらしく、中嶋さんの習熟度がうかがえます。

「めがねは細かい仕事が多いので、女性に向いていると思います。うちは一つの工場で完成品ができるので、特に達成感がありますね。実際にめがねの業界には女性は多いと思います。福井県は共働き率が高いので、男性と同じように仕事に出ています。そういう意味では、女性が機械を使って仕事をしていても違和感はありませんね。」
子どもくらいの年齢層の人たちが入ってきて、若い人たちを応援したいと思った。

「今後は経営者になってみたいと思っています。」
中嶋さんに今後の展望を聞いてみたら、予想外の答えが返ってきました。
「今、自分の子どもくらいの世代が働くようになって、応援していけたらと思っているんです。何を経営するのかはまだ決まっていませんが、飲食店か、やっぱりものづくりは面白いので、ものづくりかもしれません。」
めがねについても、「CADを習得して図面を描いてみたい」と野心を抱く中嶋さん。関社長が話されていた「自主性」がしっかり根付いているように思いました。

「こんなことをやってみたい」「挑戦してみたい」と自分から言い出すことは、なかなか難しいことです。中嶋さんへのインタビューで、関社長と楽しく会話される姿に、この会社なら何でもチャレンジしていけるのでは…そんな風に思いました。
若者の工場見学なども積極的に受け入れしていきたいと話す関社長。あなたも一度、関眼鏡製作所を訪ねてみませんか?
【連絡先】
株式会社関眼鏡製作所
0778-65-0957
sabae@seki-opt.com