【TSUGI-vol:3/5】内発的動機づくりから生まれた、持続可能な地域を作るRENEWの可能性

地域に感じる違和感と、新潟で感じた衝撃

 

「RENEW(リニュー)」は、福井県鯖江市・越前市・越前町で開催される、持続可能な地域づくりを目指した工房見学イベントです。会期中は、越前漆器・越前和紙・越前打刃物・越前箪笥・越前焼・眼鏡・繊維の7産地の工房・企業を一斉開放し、見学やワークショップを通じて、一般の人々が作り手の想いや背景を知り、技術を体験しながら商品の購入を楽しむことができます。

2015年にスタートしたこの取り組み、発起人でありディレクターである新山さんにお話を伺いました。

ーーRENEWが始まるきっかけを教えてください。

こちらもTSUGIの創業と同じ、地域の産業リサーチが原点となっています。
当時職人さんの工房に取材に行っても、「仕事がどんどん減っている」とか、「後継者がいないので自分の代で畳むしかない」など、ネガティブな話しばかり。問屋さんも、売り上げが無いからと展示会に出さなくなっているのが現状でした。

役所で働いていたときに感じたのは、地域は何をするにも補助金有りき。それがダメとは言いませんが、数年で無くなってしまう。そこに対して、ある種、反面教師的に動き始めました。また、年配の偉い方が空気を作っていて、若い人が声を上げられない現状も良くないと感じていました。そして現地でのBtoCのイベントは年に1度の「アウトレット祭り」しかなく、Hacoaなど、しっかりとブランディングをしている工房が出展しにくくなっている現状もあったんです。

ーーたくさんの違和感を感じておられたんですね。

ある日、鍛冶産業が盛んな新潟県で開催している、工場を開放して製造現場をそのまま体感できる工場見学のイベント「燕三条 工場の祭典」を視察し、衝撃を受けました。職人たちが仕事に対して誇りを持ち、仕事や商品の説明をしている姿を見て、鯖江には無い姿で羨ましかったのを覚えています。工場の祭典プロデューサーの山田遊さんに「越前鯖江工場の祭典をやりたい」と持ちかけたのですが「二番煎じはしたくないから、自分でやりなさい」と言われました。

もがいていたとき、当時福井県眼鏡協会副会長であり、河和田地区区長会長だった谷口さんと出会ったんです。谷口さんは、経営者の視点・業界の視点・地域の視点をバランスよく持っている方で、よく「ものづくりを軸に地域を活性化し、持続可能な産業を作りたい」と話しておられました。

そのために、まちのことを考える経営者チームを作ろうということで、Hacoa、漆林堂、土直漆器などが集まり「河和田トビラ」が誕生。河和田を牽引する経営者たちが集まり活発な雰囲気で、それがRENEWスタートのきっかけになりました。

 

RENEW立ち上げ時からこれまでの話

 

ーーRENEWの立ち上げはどのようなものだったのでしょうか。

最初は重苦しい雰囲気でした。「またイベント増やすのか」「工場見学で技術盗まれないか」など、反対もたくさんありました。しかし、谷口さんが「失敗しても良いからやろう」と、全体に活を入れたことで、重い腰を上げてスタートすることができました。

1年目はお金も無く、全部手作りのイベントでした。決起集会では、不安感からエイエイオーの腕が半分しか上がらないような状態です。しかし、蓋を開けると県内外含めて1200人の方が来てくれたんです。思ったよりも集まったことから、産地のポテンシャルを感じました。

ーー参加者の意識も変わりましたか?

初年度から大切にしていることに「アウターブランディング」と「インナーブランディング」があります。アウターは参加者に産地に来てもらうことで価値が伝わりファンになってもらうこと。インナーは参加企業の気づきを生み出すことで、この両輪のバランスが重要だと考えています。

2017年に「来たれ若人、ものづくりのまちへ」というコンセプト作りました。若い作り手がいないと産地が成り立たないので、まだ体力的余裕のある今のうちに採用をきちんと行い、働く人を増やさないといけない。10年くらいかけて「ものづくりをするなら福井県鯖江市」というイメージを作りたい。そのためには一社一社の売り上げとブランド力を上げなければならない。地域の魅力作りを、RENEWを通してやっていきましょうと話し合っていきました。

参加者の中では、ハヤカワメガネの早川さんの存在が大きかったです。開催当初は参加を固辞されていましたが、来場されためがねマニアの方が早川さんの仕事ぶりを見て「すごいすごい」と興奮していたんです。それを受けて、早川さんの気持ちが少しずつ変わってきた。

打ち上げで早川さんと席が隣になり、強面の中に涙を流しながら「やってよかった」と言ってくれました。「本当は息子に継いで欲しかったが話が無くなり、自分が何のために仕事しているのかわからなくなっていたが、参加して、めがね好きな若い人がいることがわかって良かった」と言ってくれて、僕も一緒に泣きました。

ーー参加者も一緒になって、作り上げていったのですね。

2017年に、中川政七商店が運営する「大日本市博覧会」と同時開催することになり、一気に内容が濃くなりました。中川政七商店と組むことについて出店者から戸惑いの声も多かったですが、議論の末、一緒にやることになりました。

ほぼ丸一年間準備をして、中川政七商店の担当者も鯖江に長期滞在しながら一緒に頑張った。結果、4日間で延べ42,000人のお客様が来て、自分たちでも出来るんだと確信し、自信に繋がった。そして、同時に問題点もたくさん浮かび上がってきました。

まずTSUGIの仕事が一部止まるなど、タスクの量が手弁当のレベルをとっくに超えてしまっていたこと。また、一気に参加者が増えたことで「おれのところに客が来ない」と文句言う人が出てきたこと。周りからの期待値も上がってしまって、応援の声をいただくのですが、自分たちはもうヘロヘロで…。

ーー応援者は良かれと思って言ってくれますから、難しいですね。

このままでは続けられない。原点に立ち戻り、RENEWはあくまでも持続可能な地域を作るためにやっており、工房見学は手段でしかないということ。量より質であり、当事者意識が大切であるということ。時代に合わせて、自分で考えて行動する、批判ではなく認め合う社会をちゃんと作っていこうと。勢いに振り回されず、2018年以降はこの考え方でやることにしました。

2019年は台風で2日間しか開催できず、2020年はコロナの感染拡大がありました。中止にすることは考えておらず、オンライン併用でなんとか開催しました。BtoBメディアを作ったり、あかまる隊というサポート組織を結成して、YouTubeで動画を50個近く配信したり。コロナというわかりやすい課題があったからこそ頑張れた1年でした。

そのときに作ったのが「くたばってたまるか」という言葉から始まる宣言文です。「これまで時代に合わせたものづくりをしてきた産地。コロナで大変だが、ファイティングポーズを崩さず、ここから時代を更新していこう。」という、ラブレターであり脅迫文でもある言葉を、産地に対して送りました。

 

RENEWとは、活動体の総称

 

ーーRENEWを続ける中で、どのようなことが生まれてきましたか?

スタートから6年間で、29軒の工房ショップがオープン、そして14人の雇用を生みました。また、鯖江市・越前市・越前町が元気なエリアだと思ってもらうことで、色々な機会創出もありました。参加企業の意識の高まり、新入社員が企画をする動き、福井の大学生が参加することで地元の魅力を再発見する機会もありました。

RENEWは便宜上「工場見学イベント」を謳っていますが、持続可能な地域のための活動体の総称だと思っています。RENEW本体以外にも「産地の合説」や「小学生ツアー」をやっていたり、去年は参加企業の全員がzoomを使えるように講習会を行いました。そして今一番力を入れているのが「通年型工場見学の促進」です。

他にも、RENEWスタッフが自分たちで空き家を借りて展覧会を開催していました。僕が関わらなくても、自立して動いているのが素晴らしいなと思っています。これまで様々なことをデザインしてきましたが、自分たちが一番デザインしていたものは「内発的な動機づくり」。みんなのやる気や熱量をどう作るかをずっと考えてきました。負荷なく登れる小さな階段をつくって、やれるかも…という確信を作り続けてきたんです。

ーー熱量のある人がたくさん生まれることは、持続可能性に繋がりますね。

「持続可能な地域」という言葉は、SDGsがブームになる前から谷口さんが言っていました。当時の僕はピンときていなかったけど、多様な人たち往来しながら、もの・状況・技術など、広義の意味で「作る」ということを、営みとしてやっていくことがRENEWの本質なのではないかと。

最近は、RENEWというものをどんどんパブリックドメイン化していきたいと思っています。昔は細かいデザインについてワーワー言っていましたが、今は「自由にやってみよう」ということを若い子たちに伝える訓練をしています。自分たちでRENEWを作った自負があるから、手を離すのは怖い。でも、もうそういう時期に来ていると自覚して、小言とかを我慢して、みんなに渡していこうと思っています。

次回のRENEWは、2022年の3月11日(金)~13日(日)に開催を予定されています。webページに詳細がありますので、ぜひ御覧ください。

https://renew-fukui.com/

 

※次回に続きます。

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