上本レース | 国内一貫生産で高品質なレースを。国内トップクラスの編レース企業。

女性には馴染みのあるレース製品。ですが、実は日本国内でインナーウェアに特化してレースを製造している会社は日本国内で10社程度、しかも福井県と石川県にしかありません。
鯖江市にある上本レースはその数社のうちの1社。以前はカーテン等も作っておられましたが、今はインナーとアウター用レースに特化し、純国産レースを製造する会社です。
福井市で創業された後、現在は鯖江市に移転され、若手を含む45名の従業員が生き生きと働いておられます。
本社が位置するのは、鯖江市東部にある河和田地区。周囲を田んぼに囲まれた、自然豊かな環境です。
そんな上本レースのものづくりを、ぜひ知って下さい。
国内でのものづくりにこだわり、差別化された商品製造を行う。
お話を伺ったのは、代表の上本悟志(うえもと・さとし)さん。38歳と、とてもお若いことに驚きました。
「資材メーカーである上本レースは、『女性用下着』『インナーウェア』『アウターウェア』のレース製造の会社です。デザインから糸の加工・染色・仕上げ・加工・検品・出荷まで、一貫して日本国内でやっていて、純国産レースが売りです。」
染色は京都や北関東で、それ以外の工程は全て福井でおこなっているなど、日本でしか出来ないものづくりにこだわりを持っておられます。
「国内で一貫生産をしているため、品質をトータル管理できるところが強みです。時間がかかる糸の加工も、自社で使う分だけを計画的に生産できるため、納品までのスピーディーな体制が特徴です。また国内製造にこだわっていることもあり、編レースの機械保有台数は国内トップクラスです。」
「細幅のものもあれば、広い幅のものも。ひとつひとつの柄も自社でデザインしています。最初の調整や糸のテンションで仕上がりが全然違ってくるので、職人さんの技術力が重要です。」
「機械は60年くらい前の物もあり、貴重です。『この機械でしか作れない製品』というのがあって、例えば風合いや伸び具合が全く違います。古い機械なのでスピードがかなりゆっくりで時間もコストもかかりますが、現代の機械では再現できない差別化された良いものを作ることができます。」
古い機械は、故障した際に直せる人が販売代理店にもほとんどいないそうです。社内には、ある程度までなら機械を直せる職人さんがおられ、丁寧にメンテナンスをされています。
中にはデザイン提供を受けて製造するものもあるそうですが、95%以上は上本レースでデザイン柄を毎月何十枚も描き、製品にしていくのだとか。最初の打ち合わせにはデザイナーも同行され、メーカーに思いを伝えていきます。
「レースの発祥はヨーロッパですが、デザイン含め製造にはすごく細かく繊細な作業が必要です。私はそういった細かい作業は日本人に向いていると考えていて、実際に海外製品の品質にも見劣りしません。日本から、世界市場に高品質な製品を提供していくというのが、私の考えです。」
コロナ禍での代表就任の中、新しい事業をどんどん仕掛けていく。
30歳で上本レースに入社された上本さん。それまでは県内のオーディオ関連の会社でメカトロニクスの設計をしておられたそうです。分野外のお仕事から繊維業界へ足を踏み入れ、家業を継承されたときのことについて伺いました。
「当時は上本レースを継ぐという考えはありませんでしたし、父親からは『絶対にこの会社を継ぐなよ』と言われていました(笑)。苦労しているのを隣で見ていて、この先厳しいだろうなというのは感じていました。
でも30歳手前に差し掛かったあるとき、自分が継がなければこの会社を継ぐ人がいないという事実に気づきました。社員さんも、小さい頃から面識がある方が多く、若い社員さんも多かった。みんなレースが好きで働いているのを見ていて残したいという思いが強くなり、後を継ぐことに決めました。」
前職を辞め、鯖江にある経編の会社で半年間勉強された後、上本レースに入社された上本さん。その後、2020年にお父様から代表を引き継がれました。
「新型コロナウイルスの感染拡大が酷い状況の中、父親から会社を引き継ぎました。1番大変なところからのスタートでしたが、前々からこの時期に交代しようと話していたので戸惑いはありません。繊維業界が厳しいことは知りながら継ぎましたが、勝算があるわけではなく、ただ会社を残したいという思いだけでした。しかし入社してから、逆に今まで出来ていないことが社内には沢山あると気付き、一つ一つやっていけば、まだまだ成長していけると希望を持ちました。」
厳しい中での世代交代。代表になり上本さん自身が一番変わったことは、社員さんと話すことが増えたことなのだとか。
「これまではトップダウンで周りを動かす社内文化だったことと、私自身が営業職だったので社内におらず、会話量が少なかったんです。交代して、まずは社員さんとコミュニケーションを取るようにしたことで、毎日の作業の中から改善点などを見つけることが出来ていますね。」
まだお若い上本社長。なぜこの時期に、継ぐなと言われていた会社の代表になる決意をされたのでしょうか。
「1番は、会社の体制が大きく変わる必要があるタイミングだったからです。少し過去の話になりますが、上本レースは昔から問屋さんに製品を販売していました。私は、自分たちで作った製品を使ってくれるお客様に直接売りたい、そして一緒になってものづくりをしたいという思いから、会社自体の体制を変える必要がありました。
これまでの取引先は、変わらず良いお付き合いをさせていただいていますが、8年前から新体制を整え、新規でメーカーやブランドへの売り込みを始めました。直接話していると『こういうことも出来るんだね』と話が広がり、さらにこういうことも出来ると細かく逆提案が出来ます。」
新しい仕組みで動き始めた上本レース。開発にも時間をかけられるようになり、結果的に技術力と士気が上がったそうです。また5年前には、国内でレースを作る会社をこれ以上減らしたくないということで、丸岡にある廃業予定だった同業者の経営資源を引き継がれました。
「丸岡の会社を引き継いだことと、自分たちで一から作って売るという、これまでやってこなかった業務が増えた分、8年前と比べて従業員数は倍になりました。会社自体が大きく変わってきましたね。」
そして代表を交代された昨年から、さらに新しい事業に取り組んでおられます。
「開発中なのであまり細かいことは明かせませんが、衣類用レース以外のものを作りたいと考えています。異業種の方と話をして、レースとは違うけれど、レースを編む機械だからそこ編める自社製品を開発しています。社員さんも図面だけ見て何を作っているか知らない状態で試作をしているので、不思議そうにしていますね(笑)」
レース製造のベテラン職人とともに、挑戦的なものづくりを。
「今いる社員さんは、鯖江市の方が半分、他には福井、武生、春江、丸岡、三国など、色々なところから来てくれています。レース製造がやりたいから来ている人もいれば、特殊な機械が操作したいからという方もいます。」
長く一緒に働ける方に来てほしいという上本社長。スキルはゼロからでも大丈夫とのことです。
「日本でしか出来ないものづくりにこだわりを持っているので、同じ志を持つ方が来てくれたら嬉しいです。海外の方にも、日本で作ったものを身につけて欲しいですね。」
自社資材を使って最終製品を作ろうと奮闘されている上本さん。挑戦的なものづくりを一緒にやってみたい!という方は、ぜひ声を掛けてみてはいかがでしょうか。
【連絡先】
上本レース
TEL:0778-65-1511
MAIL:s_uemoto@uemoto-lace.com