八田経編株式会社 |「経編」の可能性を広げたい。親子で超えていく。

繊維のまち鯖江。繊維の会社がいくつもあるというのは知っているけど、「編み」や「織り」など繊維の特徴の違いはいまいち分からない…。という方も多いのではないでしょうか。

八田経編では、社名にも入っている経編(たてあみ)という編み方の生地を、しっかりとブランド化させて、よりわかりやすく新たな可能性を切り拓こうと動き始めておられます。

 

繊維の産地が持つ技術を活かして。チームワークのものづくり。

 

お話を伺ったのは代表取締役社長の八田嘉一郎(はった・かいちろう)さん。現在、八田経編は、鯖江市中野町にある鯖江工場とあわら市にあるあわら工場の2拠点で生産を行われています。

八田経編は、1949年に家族経営の工場として嘉一郎さんのお祖父様が立ち上げ、1965年にお父様が、八田経編株式会社として創業されました。

(社長)
「八田経編は経編生地の製造・開発・販売に特化した会社です。ファッション素材や、ユニフォーム、スポーツウェアといった衣類の生地が生産の40%を占め、車のシート等の素材が34%、その他の資材が26%でして、ファッションと資材の割合が4:6となっており、バランスが良い経編メーカーだと思っています。」

(社長)
「我々はファッション生地を作っていますが、洋服ができるまでの工程はとても時間がかかります。生地づくりからやろうとすると、上手くいっても4〜5カ月はかかるんです。洋服を作るまでには企画の段階からはじまり、糸づくり、布を編むための準備、編機の調整と生産、生地の染色加工、縫製など、様々な工程があります。

北陸地域の繊維は、オリジナルの糸を作ってもらったり、染めを近所にお願いしたりと、北陸地域内にある様々な繊維会社と綿密な打ち合わせをして、製品を作っていく『チームワーク』が特徴です。」

 

経編を活かして手袋の生地から衣料品の生地そして工業製品の資材へと。

 

(社長)
「祖父が創業したときは、ウエディングで新婦がつける白い手袋用の生地に使用される薄く滑らかなトリコット生地を生産していました。当初は販売先が限られていましたが、量産型の機械で大量生産していく中で、商社や原糸メーカーとやりとりをして、会社をどんどん大きくしていきました。

1970年代には父が経編機械の本社があるドイツへ行き、セーレン株式会社(*日本の総合繊維メーカー)とタイアップしてダブルラッセルの生地製造を始めました。」

ダブルラッセルとは、簡単にいうと立体構造をした生地です。
クッション性があり、ベッドの生地に使われていたり、リュックサックの背裏部分や、シューズ、サポーター、車のシートなど、私たちの生活の中で使われる身近なものに多く採用されています。

お話を聞いていると、八田経編の生地が採用されている商品やブランドは馴染みのあるものばかり。日本の暮らしを支えている会社なんだと実感します。

 

父から若い力を求められ帰郷。幼いころから悟っていた家業を継ぐということ。

 

次にお話を伺ったのは、社長の息子さんである、取締役営業担当の八田 嘉之(はった・かゆき)さん。嘉之さんは八田経編に入社して6年目。現在は、あわら工場を中心に営業、企画をされています。

(取締役)
「現在は、工場のあるあわら市に住んでいるのですが、産まれも育ちも鯖江市です。鯖江の本社工場のすぐ隣に実家があり、一人っ子だったので、小学校の6年生くらいから、将来は実家で何かやらないといけないんだろうな、こういう道なんだな…と悟っていました(笑)

実家を継ぐことは意識していましたが、両親からはすぐに継がなくてもいいよと言われていたので、大学卒業後は兵庫の輸送機械メーカーで働いていました。30歳位まで働いて実家に戻ろうかと思っていたのですが、就職して2年経ったときに、そろそろ帰ってきてほしいと言われまして…。イメージしていたよりも早くて驚きましたね(笑)」

夏前に戻ってきてほしいと言われ、その年の年末には家業を継ぐために帰ってきたという嘉之さん。

(社長)
「本人には色々複雑な思いがあったと思うけど、当時は会社の業態が変化するタイミングで、若い力が必要だったんです。戻ってきてくれてありがたいと思っています。」
と、嘉一郎さんは話します。

現在、アパレルブランドや生地問屋などに企画提案の営業をしておられる嘉之さん。

(取締役)
「色々な展示会に出たりしましたが、初めは全然上手くいかず、苦労しました。今は、自社の経編生地をしっかりプロモーションしていくことに力を入れて営業をしており、徐々に認知度が上がり好転してきています。洋服を購入する一般の方は、それが織物であろうが編物であろうが、布の特性の違いを理解されている方はあまりいないので、我々は経編の「機能性」や「利便性」が伝わるような生地の企画開発をして生産しています。

例えば、これまで織物でしか作られて来なかったシャツの生地を、経編の特性を活かした『洗っても、シワがつかないイージーケアのニットシャツ』の生地を開発して新たな市場を開拓したり。

他にも、Tシャツの生地は丸編という技法が業界では主軸となっていますが、『お手入れ簡単でパリッと綺麗に見えるTシャツ』を経編で開発。オリジナルウェアブランドの株式会社オールユアーズさんと一緒に生地作りから行いました。

お客様とやり取りをしていると、実際に求めている量は極少量だったりするんですよね。一般的に経編生地はロットが大きく、生地の販売方法に悩んできましたが、徐々にやり方が分かってきて、お客様と密なコミュニケーションを取り、生産も規格化しロットをまとめることで、個性的なダブルラッセルを自社で直接売っていくことができるようになりました。」

 

自社製品の開発もスタート。

 

一般的に繊維業界では、中間材として生地づくり側と、縫製して最終製品に仕上げる側に分かれます。生地づくりの企業が自社製品を作るのは難しいと言われる中、八田経編はこのコロナ禍で、ダブルラッセルの生地を使ったマスクを開発されました。

(取締役)
「8Tイーナマスクというマスクの製造と販売をしています。薄い生地だと会話や呼吸で生地がペコペコして口にあたってしまいますが、弊社のダブルラッセルは生地がしっかりしていて厚いので、話しやすいんです。

このマスクに採用している高密度ダブルラッセルは糸からこだわった高級な生地なのですが、生地の厚みによる安心感や適度なストレッチ性が引き立つ製品に仕上がったと感じています。このマスクで、経編を知ってもらうきっかけの一つになればと思っています。

自社製品を作って販売するというのは、我々のような生地の生産をメインで行う工場としては、正直しんどいんです。でもそればっかりは言っていられないので、イーナマスクを通じて製品を販売する経験を積みながら、難しさや問題点を改善しながら、次のステップに進みたいと思っています。」

嘉一郎さんの趣味は長距離スポーツ。

(社長)
「マラソンや、トライアスロンなど、持久力が必要なスポーツを20年ほど続けています。実は福井県は、全国で唯一フルマラソンが行われていない県なのです。たくさんの方から、フルマラソンコースを作って欲しいという声をいただき、仲間を集めてコースを検討しながら、試走会を開催しました。

2024年にはフルマラソンを開催できる予定で準備しています。弊社の生地はスポーツ選手のウェアの生地にもなっていたりするので、開催に向けて、ダブルラッセルの生地で機能的なオリジナルのウェアができればと思っています。」

八田さん親子それぞれに、ファッションとスポーツといった興味のあることを切り口に積極的な商品づくりに踏み込んでおられます。

 

会社のモットーは「もっと、ずっと、ニット」。クリエイティブに可能性を広げたい。

 

現在、鯖江工場では、中途採用と、高卒採用の募集をされています。

(取締役)
「八田経編がやっていることは枠にはまったものかもしれませんが、お客様の求めている生地を、我々から提案していく際には、枠からひとつ超えたものを提案していきたいと思っています。

たとえ良い企画を提案出来たとしても、それを安定して作れないといけません。提案を具現化できるのが工場の職人たちです。工場で行う繊細な整経や編立の各工程は、社員の皆さんに支えられています。いつも感謝しています。

我々は生地であれば色々なアイデアを思いつくのですが、最終製品を作ることはまだ難しいところもあるので、自由な発想を持って挑戦される方に出会いたいですね。」

(社長)
「年配者の力で支えている会社というのは、今後厳しいと感じています。若い力が入ってくると、新しいチャレンジができると思うので、ブランディングをしていき、新しい世代の確立を進めていきたいです。

鯖江には糸を作れる工場、編み、織り、縫製、染めの技術があります。何をするにも、うちだけでは完結できないので、うちが持つ独自の技術と他社が持つ技術を連携していけるような動きが出来ていけたらと思っています。

オールユアーズさんとやってきたような商品開発はもちろん、業界内と連携をして、他社とのコミュニケーションを取りながら挑戦していける繊維の企業でありたいと思っています。」

2021年秋にホームページがリニューアル。読めば読むほど経編を知ることができる「八田経編の魅力」がぎゅっと詰まったものになっています。ホームページには今回の記事よりもさらに詳しい社員の皆さんの声や最新情報も載っています。

これからやっていくことは、経編生地の可能性を広げていくこと。その手始めに、お客様により自社の生地についてわかりやすくお伝えするために、経編生地ブランドを発表。サステナブル社会の到来に向けた廃棄ゼロ設計思想の高機能素材「Suastenza(サステンザ)」をはじめ、5つのブランドを設立しました。

八田経編の可能性を一緒に広げてみませんか?
興味のある方はご連絡を。

【連絡先】
八田経編株式会社:https://www.8ta.co.jp/
〒916-0033 福井県鯖江市中野町115号10番地
TEL:0778-52-1200
FAX:0778-54-7228
8Tイーナマスク:https://iinamask-8tawarpknit.stores.jp/
採用案内について:https://www.8ta.co.jp/recruit/

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