【漆琳堂-vol:4/5】スタッフも家族のように。みんなで相談する職場環境。

これまで漆琳堂は、内田さんの祖父母、ご両親、そして内田さん夫婦という親族で経営されてきました。しかし今では、県外出身の女性スタッフが3名入社し、2022年春にはさらに新しいスタッフが2名入社予定です。

鯖江の仕事図鑑でも、漆琳堂はじめてのスタッフ、嶋田希望さんを取材させていただいています。
(嶋田さんの入社ストーリーはこちら:https://sabae-job.jp/ijyu_shimada/)

嶋田が家族以外で初めてのスタッフで、嶋田+うちの家族という体制は、お互いが不安だったと思います。家族でやっている環境に一人で入っていくって嫌じゃないですか?自分だったら嫌だなと思うんです。でも、会社としては当時「aisomocosomo」と「お椀や うちだ」2つのブランドがあったし、どんどん生産していかないといけない状況にあって。募集はしていなかったのですが、忙しくなり始めた頃だったので採用することにしました。

ーーはじめての試み、どのような難しさがありましたか?

給与はいくらにするか、住居はどうするのかなど、分からないことばかりでした。近くにある漆器屋さんが家族以外の従業員を雇っておられたので、スタッフを雇うってどういう感じなの?と聞きました(笑)。土曜日、日曜日ってどうしたら良いのかとか、雇用契約はどうやって作るの?とかゼロからのスタートでした。

中川さんにも相談しました。もっと仕事が忙しくなってから入れた方が良いのか、忙しくなる前に入れた方が良いのか「10人増えるわけではないから、入れてみたら」とアドバイスをいただき、入社してもらうことを決めました。

嶋田とは面接を2回してから、3回目東京での展示会を見に来てもらって、中川さんに紹介して「この子が入ろうとしているんだけど、どう思いますか?」と聞いたりしました。嶋田本人からすると怖いですよね(笑)
僕の知らないところで、嶋田が中川さんに「生半可な気持ちで入るな。自分が会社から仕事を与えられるのではなく、仕事を作るんだ」と言われていたようで、今でも怖かったと話していますが、結果的に、嶋田が一人目に来てくれて本当に良かったと思っています。

ーー期待に答えてくれたのですね。

一子相伝で、自分の子どもにしか伝えていかなかったらいずれ途切れてしまいます。でも工芸の世界は、丁稚に入ることで習って、みんなが塗れるようになっていく、というのがあるから続いていきます。工芸って、良くも悪くもみんなができるから続いてきたんだと思うんです。漆琳堂の商品に関しては、社内で作っていける職人を増やさないといけません。工芸界を残すために、内製化を進めていかないといけないというのが今重要なポイントだと考えています。

 

漆琳堂に入って良かった。

 

漆琳堂のショップスタッフ、楳原和香(うめはら・のどか)さんにもお話をうかがいました

業務内容は、ショップのお客さま対応です。他に営業補佐、メール対応、出荷作業も担当していて、その他に求人、ポップの作成、在庫管理を基本的に1人で行っています。

ーー楳原さんはどのようにして入社されたのですか?

漆琳堂の直営店が2016年7月にオープンしたのですが、オープンのタイミングにショップスタッフとして入りました。漆琳堂がショップスタッフを探していて、加えてAdobe Illustratorに触れ、簡単なデザインもできる人材を探していたそうです。そのときちょうど私が結婚を機に大阪から河和田地区に移住してきた所で、移住の噂を聞いた社長から「働かないか」と声をかけていただきました。

お店の什器も無い状態のときに入って、初めはショップのロゴや、プライスカード、紙袋などのデザインをしていました。

ーーショップ店員の経験はあったのですか?

まったく無かったので手探りでやってきました。お客さんは、漆器のお店と分かって来てくれる方もいますし、知らずにふらっと来てくれる方もいます。漆琳堂の商品は、カラフルでThe漆器というイメージではないので、3つのブランドがあることや、それぞれの商品の特徴を説明をしています。

漆器や漆について詳しい方はすごく詳しい方もいます。私は職人ではないため工場のこと、技術や工程のことなどを詳しく聞かれるとお伝えできないこともあります。日々勉強しながらお話できる内容を増やしていっています。

 

漆琳堂だからできた仕事と子育ての両立。

 

 

ーー2018年に出産されたのですね。

はい。いま3歳の娘がいます。以前は、展示会に同行したり、東京へ出張してデザイナーさんと打ち合わせをしていました。出産後、出張は別のスタッフに行ってもらい、コロナ禍でオンライン打ち合わせが増えたので、その時は私が担当したりと周りのスタッフに助けてもらっています。

ーー子育てが始まって、働き方に変化はありますか?

出産前は9時~18時で働いていましたが、今は9時~17時で働いています。娘は1歳の頃は、保育園に慣れるまで勤務時間を16時までにしてもらうなど、柔軟に対応していただいていました。でも、16時までだと仕事がやりきれない部分もあって、娘が保育園に慣れてきたタイミングで17時までに延長して働く時間を調整しています。

ーーご自宅も保育園も会社の近所なんですね。

保育園にお迎えに行った後に、娘を会社へ連れて行く日もあります。
漆琳堂はアットホームな社風なので、会社に子どもを連れて行っても、孫のようにみんなが優しくしてくれます。育休中は、家にずっといることが多く、会社へ顔を出したりしていました。アットホームな環境だから子どもが泣いても許してもらえるし、トイレに行くときも見ていてもらえますかと気軽に言える空気感があって、子育て中でも上手くやっていけているなと思います。

ーー出産による心配事はありましたか?

つわりのときは漆の匂いがだめで、二階の工場に上がれなかったこともあったり、体調がすぐれないときはお休みさせてもらったりと、迷惑をかけました。でも相談しやすい環境なのでありがたかったです。産休に入る前は、私のやっていた仕事は誰がやるのかと混乱していましたが、社内で引き継いでやってくれていました。

大阪で里帰り出産をしたのですが、仕事をやりたかったので実家にパソコンを持って行って家で作業をしていました。
子どもが保育園に入る年には丁度コロナの感染拡大が始まったので、2ヶ月くらい家で仕事をしていました。子どもが風邪をもらってきて休んだり、急に何かがあっても、家で対応できるようにしていただいたので良かったです。

河和田に来て、漆琳堂で働くことができて良かったです。娘を家族のように受け入れてもらえる環境があることで、より漆琳堂が好きになりました。

ーー楳原さんにとって、漆琳堂はどんな会社ですか?

スタッフの仲が良くて、みんなで喋ることが多いです。大きい会社だと課に分かれていたりしますが、うちは「みんなで一緒にやる」というスタンスで、何でも共有して相談をします。
新しい商品の提案をしたり、ワークショップをやったり、みんなが話を聞いてくれて、やりたいことをやるためにはどうするかを話しながら進んで行けるという、漆琳堂だからできる環境がありますね。

社長も何かあれば、必ずみんなに共有してくれます。
「こういうことをやろうと考えているけど、どう思う?」と社員みんなに相談してくれるので、事後報告は一切無くて、トップダウンで進んでいくということはありません。社内の体制もみんなで相談しながら変化していて、以前は、社長の頭の中に工場のスケジュールが入っていて、朝に確認をしてそれぞれが動いていく感じだったのですが、最近はスタッフが生産スケジュールを管理し、現場動かしています。社内の動きがいい意味で変わったなと感じています。

金継ぎの仕事は3年目の高橋が担当していたりと、スタッフの担当振り分けも徐々にできてきました。

ーーさらなる求人もされていましたね。

職人の育成は大切だと話し合い、求人を行いました。求人は過去に2回行ってきましたが、今回は私も面接の進行を担当したりと関わりました。

初めて求人募集をかけたときは、SNSでラフに募集をしていたのですが、毎年試行錯誤しながら、前回からは工芸を広めたいとか、漆器に想いがある方に来てもらえるように、書類提出を増やしたり、対象者を絞れるように募集をかけました。来春からは新しい職人スタッフが入ってきます。商品を知ってもらう事も大切なので、私からは、商品についてや梱包作業を教えたりする予定です。

 

漆琳堂直営店がオープンして5年。

 

 

福井の人でも鯖江・河和田のことを知らなかったり、来たことがないという方もたくさんいらっしゃいます。もっと発信して、お客さんにいっぱい来て欲しいと思います。

お客様の年齢層は幅広くて、子連れからお年配の方まで来られて、カラフルな漆器を見て、これも漆器なの!?と感動してくださいます。県外の方もネットを見て、漆琳堂目当てで来てくださる事も多いです。県外の方から「福井駅について朝一番に来ました!」と言ってもらえたときは嬉しかったですね。

 

※次回に続きます

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