青山眼鏡.vol2 | 業界の度肝を抜きたい。新人デザイナー奮闘の日々。

ちょうど一年前に取材をさせていただいた「青山眼鏡株式会社」。

新しい仲間を募集する記事を公開した後、会社にどのように変化があったのか。追いかけるべく、追加取材を行いました。

前回の記事はこちら。
「仕事は「生きがい」ではなく「やりがい」。めがねの売り方を提案し、多くの人に届ける仕事。」

今回改めてオフィスを訪ねてお話を伺ったのは、2019年に新卒で入社された商品企画部の山目篤史さん。営業企画部の石田和也さんには山目さんのお話に補足をしていただく形でご参加いただきました。

山目さんが会社を知ったきっかけから1年目のお仕事内容など、めがねのデザイナーがどのようにして成長していくのかをお聞きしました。

 

久しぶりの新人デザイナー。県外から、インターンを経て入社。

 

山目さんは愛知県豊橋市出身。京都精華大学でプロダクトコミュニケーションデザインを専攻された後、新卒で入社。現在は鯖江市にお住まいです。

山目「大学で産学連携の授業で、ボストンクラブさんとsowell design officeの脇聡さんに教わりながら、前期15週でめがねを一本作りました。その際にめがねの産地である鯖江見学に来て、このまちのことを知りました。

この授業は、最後にメガネトップさんと関係者の方にプレゼンをして、選ばれた3型分だけが『眼鏡市場』から販売をすることができるという枠があり、私が作ったものを選んでいただきました。」

(今掛けておられるのがそのめがねです。)

山目「就活を全然していなくて、悩んでいたときにゼミの先生から、もしめがねに興味があるならインターンに行ってみてはとお声かけいただき、脇さんを通じて青山眼鏡に1週間インターンに行き、その後就職を決めたという経緯です。」

現在所属されている商品企画部で、デザイナーとしてインターンをされた山目さん。知らない土地に一人でバイクで来て、エアコンの無い古民家を間借りし、死物狂いで2週間暮らしていたのだとか。

山目「インターンで感じたことは、ソフトウェアの操作や技術的なことは大学でやってきたことが活かせるというか、応用できる場所と感じました。青山眼鏡は周りの方がとてもアットホームで気軽に話しかけてくれたので、何でも聞きやすかったです。そのときに、青山眼鏡の雰囲気で仕事がしたいと思いました。」

石田「青山眼鏡にはベテランデザイナーは多いんですが、しばらく採用をしていなかったので、今後を考えると必要だなと考えていました。デザイナーに求められることもどんどん複雑になってきていますし、ちゃんと後継を育成して、若い力の将来性を大切にしていきたいなという話をちょうど社内でしていた時期でした。」

山目「入社してすぐに研修があり、生産管理など他の業務を経験した後、現在は商品企画部で先方に持っていくコンセプトスケッチのアイデア出しだったり、3Dプリンタでサンプルを出力するときのモデル制作などのお手伝いをしています。企画にはデザイナーが10名いますが、20代は私しかいなくてほとんどが40代の方。ベテランか私か、という状況です。」

インターンを経て入社し、希望の部署に配属された山目さん。インタビューをしたのは入社して半年たった頃ですが、仕事をしてみての率直な感想を聞いてみました。

山目「大学4年間を通して学んだことや技術を使って、それが仕事になって、生活に必要なお給料をいただいているというのがすごいことだし、やりがいがあると思います。ただそれ以上に奥が深くて、学生のときは商品になるならないを妄想で完結させていたことが商品になっていくしかない状況に立ち、生産コストや発注先などの現実的な問題が複雑に絡み合ってくるので、単純なアイデアでは立ち打ちできなくなる。どうやって作るの?という深堀りに繋がっていくので、今一番難しいところだと感じています。

売価が決まっていてそこに合わせるには、製造するときに押さえるべきポイントがあります。それを無視して好きなようにアイデアを出しても、作れる工場が無かったりなど成立しません。学生のときに作っためがねは全部手作業で作っていて、1本作るために何十時間も使って作っていたので。プレスは何回までとか、生産ラインで成り立っていくのかどうかなどを意識して学んでいます。」

大学生のときに山目さんと青山眼鏡を引き合わせた脇聡さんとは今でも仲が良く、困ったときに相談に乗ってくれる頼りになる存在なのだとか。近くに経験豊富な同業者が集まっていることも、鯖江の特徴的な部分です。

山目「趣味や自分の好みじゃなくて、最終的に人の顔にかかるものだから、カッコいいけど危険とかはナシだと言われます。自分の考えたものが100%の安全保証ができるかと言われると、まだ言えません。描いて終わりじゃないということをひしひしと感じていますね。

他にも、図面を描いて先輩に見せたときに、ここが上がっている/下がっているという指摘をいただいて、自分では何を言っているのか全然わかりませんでした。ほんとに、1mm高さの違う線をスッと引くだけでめがねのフォルムが変わるんです。この産学連携の授業で学んでいた段階では、なんとなくやっていけるだろうと天狗になりかけていたところがあったんですが、ここにきて一発KOされました。やはりプロで何十年も経験をされてきた方にはわかるんだなと。衝撃的でした。」

 

デザイナーが育つ環境づくり。競争も大切だが協力を。

 

石田「半年で身に付くことなんてほとんどありませんし、僕たちベテランになったとしても気付きはたくさんあります。仮に納得のいくものができたとしても、半年後に振り返ったときに「古いなあ…」と思うこともザラにあります。前回作ったものは超えていかなければ成長はありません。ベテランの立場から言うと、ギュンギュンに吸収して、先輩たちがやってきたことも一度自分なりに消化してノウハウを学んでいけば成長は早いと思います。一人でやっていても浅いものしかできないので、現場にいるということをフルに活かしてほしいですね。

これまでたくさんのデザイナーを育成されてきた石田さん。社内に先輩デザイナーがいて鼓舞してくださる状況は、山目さんのデザイナーとしての成長にとってかけがえのないものだと感じました。

石田「うちの企画チームは絵を描いているだけじゃなくて、素材を触ったり削ったり、工場の部品の確認など全てデザイナーがやるんです。コンマ0.1mm単位で意識をして作っていく。なので絵を描くだけではない形で知識が伸びていくはずです。まだ山目が担当したものは量産化が決まっていませんが、それが決まったら、最初から最後まで統括することになる。すべてのパーツが自分の目を通って、確認したものが形になっていく。そういう側面でいうとうちに入社したデザイナーは目が肥えていくので、これからが楽しみですね。」

部署は違えど先輩の石田さんに期待される山目さん。毎日学ぶことだらけですが、充実した日々を送っておられます。そんな山目さんに、先輩方は型にハマるなとアドバイスをされています。

山目「難しいんですが、人と持ち物などが被るのが嫌いだったり、自分しか考えていないことにこだわりがあるんです。大学時代はそれで突っ切って、自分のアイデアを自分で具現化して完結だったんですが、仕事になったときに工場や取引先などのルールを知らないと作れないものがやっぱり出てくる。なので、めがね業界のルールを徹底的に叩き込むことを意識していて、それを踏まえた上で常識を破りたいんです。現実的でポジティブな常識の無視がやりたいと思っています。

集団でデザインをやっている会社の中でスタンドプレイをするのは違います。まだまだ手探りで、ほんとに半年経ったのかな……というくらいすぐに過ぎていきました。デザイン案を出す上で、何が良くて何が正解かもわからない。今は色んなものを学んで感じ取っている状態ですね。」

石田「デザイナーって結構変わっている人が多くて、孤高な人や競争心の強い人などいろいろといるんですが、うちのデザイナーは昔からの社風でアットホームな人柄なんです。意見もしっかり交換しながらモノを作っていく環境があるので、最大限活かしていってほしいですね。」

 

鯖江で暮らすと、昔から欲しかった車が自然に手に入った。

 

ご実家は愛知県の豊橋市で、大学は京都。移動手段はずっとバイクだった山目さんですが、鯖江に住み始めてライフスタイルにも変化が出てきているようです。

山目「アウトドアが好きなので、山が近くにあるのは嬉しいです。仕事だとデスクでパソコンを使って……ということが多いので、休みの日は息抜きとして山に行ったり部屋の家具をDIYしたりしていると、時間を忘れるくらいやっちゃいますね。最近車を買ったので、これからいじり倒す予定です。ちなみに古いジムニーなので、サビたパーツを全部ヤスリがけして、ピカピカにしていく予定です。メンテナンスは好きで、オークションで中古のダイソンを買って全部バラして、新品同様の状態までメンテナンスして使っています。友人に話したら変なやつと言われますが、構造が好きなんです。」

山目「友達は全くいません(笑) 出会う場所が無いというか。まあ意外と一人でも生きていける人なので気にしていません。ふと何かを話したくなるタイミングはありますけどね。」

石田「同年代の仲間がいるとまた違うんでしょうが。僕たちのときは同期がたくさんいたので、頻繁に一緒に遊んでいました。少ないのはある意味可哀そうな部分もあるのかもしれませんね。今度業界の面白い人を集めてみんなで飲みに行きたいと思います。」

最後に、石田さんから若いめがねデザイナーたちにメッセージをいただきました。

石田「何万というめがねのフレームがある中で、まちで自分がデザインしたフレームをかけてくれているのを発見したときの感動が忘れられません。初めてものを作るという感動は一度しか味わえないので、それを新人たちが今から味わうと考えると、震えますね。頑張って欲しいと思います。」

めがねのまち鯖江に来て日々奮闘する山目さん。無責任にはなりたくないが、ある意味自分を信じてやっていくことが大切だと考えています。わけもなく惹かれるものや一目惚れしてしまうことを要素分解して、突き詰めていきたいと語っておられました。

入社1年目の右も左もわからない状況を楽しんでおられるように見えた山目さんの働く青山眼鏡株式会社は、めがねフレーム・サングラス・老眼鏡・ファッショングラス等、多彩な商品の企画・開発から製造・販売までをトータルに手がけておられるめがねの商社です。

気になった方はぜひ下記から連絡を。

 

 

【連絡先】
青山眼鏡株式会社(webページはこちらから)
電話:(0778) 54-8055
メール:info@aoyamaopt.co.jp

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