清水正義 |79歳の親方と24歳の弟子。挽いて、挽いて、挽きまくれ!

今回取材をしたのは、鯖江市河和田地区西袋町の住宅街の一角に工房を構え、漆器のお椀の木地材料を作る「丸物木地師」の清水正義(しみず・まさよし)さん。

清水さんを訪ねて工房を覗くと、お椀はもちろん面白い形をした木の塊がコロコロと並ぶ楽しい空間が広がっていました。

清水さんが一人で黙々とお椀作っている姿をイメージしていたのですが、入り口近くには若いお兄さんが……!

「お〜い、上杉! お前山形県出身やな?」

「出身は山梨です!」

「……山梨かぁ! 山は合ってたな、ガハハハハ!!」

清水さんの工房には2019年3月から2年間、山梨県出身の上杉瞭太朗(うえすぎ・りょうたろう)さんが弟子入りをされているとのこと。

 

「仕事が減るのは今のご時世仕方がないから、何ができるか自分で考えろ!」

 

清水さんは、現在79歳。かつて福井県大野郡にあった石徹白村で生まれました。15歳の頃から漆器のお椀木地を挽いておられ、丸物木地師一筋64年の職人です。清水さんのお父さんも丸物木地師で、石徹白村の水車を利用してろくろを回してお椀の粗挽きを作っていたそうですが、粗挽きだけでなくこれからの時代は仕上げも出来なければいけないと考え、清水さんがまだ小さい頃に河和田へ移り住み、お椀木地の仕上げまでを作るようになりました。

清水さんに、近頃のお仕事について話を伺うと、昨年までは月に500-600個ほどの注文があったのが、徐々に注文の量が減ってきているそうです。これまでは百貨店から商人へ、商人から塗師へと仕事がまわり、木地の注文を受けていたのですが、近年の塗師の仕事は、長年使用した漆器の塗り直しの修理依頼が多いようで、新たに木地を作ることが少なくなってきているのが原因だと清水さんは考えます。

 

仕事が減っているなら自分で考えて作り続けるしかない。

 

アイデアマンの清水さんはお銚子やストラップなど、これまでにたくさんの商品を独自に創ってこられました。仕事が無いなら無いで、ものづくりを楽しもうというスタンスが伝わってきます。

若かった頃は、朝から晩までお椀を挽いて、挽いて、挽きまくっていたという清水さん。忙しかった頃は時間に追われながら仕事をこなし、昼休みや仕事が終わってから、オリジナルのものを作ってこられました。工房にはお椀以外にも、木のボールや、3本足のお皿など面白い形をしたものが、そこら中に並んでいます。

「作って欲しいという依頼は、とにかくウェルカム。もう80歳になるのでやらなくても良いか……と思うこともあるけれど、創作意欲が湧き続けていて、なんとか良い品物を作ろうと燃えています。自分は職人だから売る場所や方法はわからないけど、作って欲しいと言われたらサーッと作ってしまうね。何でも思いついて、何でも作ってきたから俺は今暮らしていけているのだと思うよ。」

 

分からなかったら早く聞け、俺は先が長くないかもしれないぞ。

 

清水さんの工房では鯖江の職人だけではなく、ブータンやブラジルから来られた方にも指導をしてこられました。帰国後にちゃんと継続しているかを確認するためにブータンまで行ったこともあるそうです。


(ブラジルから来たエリックにお椀の挽き方を指導する清水さん)

3月から弟子入りされた上杉さんには「技術を見て、売れる品物を考えて、他と違う今までに無いものを作れ。お椀だけではなく、おもちゃでもなんでも挽け」と、とにかく何でも自由に挽くように教えているのだとか。

そんな清水さんの元で修行を積む上杉さんは「いい親方に巡り会えたと感じている」と話してくれました。

「技術的なことを聞いたらどんどん教えてくれるし、相談をしたら一度やって見せてくれる。親方は仕事が早くて、綺麗なものを作るので、自分はいつになったら親方のようになれるのだろう…と逆に不安に思うこともあります。短い弟子入り期間だけでは一人前にはなれないと親方には言われていますが、全力でやるのみです。」

まずは仕事を覚えることが第一だと上杉さん。

清水さんの工房での弟子入りは2年間で終わってしまうので、この期間のうちに一通りの仕事ができるようになっていきたいと話します。

「この工房には色々な方が出入りするので、こんな品物はどうだろうか? と意見を聞いて作っています。河和田に来るまで『職人は一人でこもりがち』なイメージがあったのですが、いろんな人に話を聞いた方が得だなと思っています。」

清水さんに弟子入りしてすぐの上杉さんですが「職人の数と仕事の量が少ないからこそチャンスかもしれない。けれど、そこでダメな仕事をしていては、他の所へ仕事が流れてしまう」と話します。

「日々、身の回りにある小物を見て、木に置き換えて作ることができないかと試行錯誤して挽いています」

これからは、自分で作って自分で売るということをしなければいけない。大変なことだけれども、技術はどんどん伝えていきたいと清水さんは弟子の上杉さんの成長を楽しみにしておられます。

「若い人は、そもそもお椀を使う機会が少ないから、作っても売れるというイメージが沸かないと思う。だから、売れると思うものを何でも自由に作ってみろという方針だね。」

創作意欲が溢れ続ける清水さん。そして、まだまだ若い上杉さんのこれからが楽しみです。

 

【連絡先】
清水正義
鯖江市西袋町205
TEL:0778-65-0351

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